朗読少女:乙葉しおりの本の小道 第70回 幸田露伴「五重塔」

「五重塔」作・幸田 露伴(岩波文庫)の表紙(左)と乙葉しおりさん
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「五重塔」作・幸田 露伴(岩波文庫)の表紙(左)と乙葉しおりさん

 美少女キャラクターが名作を朗読してくれるiPhoneアプリ「朗読少女」。これまでに50万ダウンロードを突破する人気アプリとなっている。「朗読少女」で、本の朗読をしてくれるキャラクター、乙葉しおりさんが名作を紹介する「乙葉しおりの本の小道」。第70回は幸田露伴の「五重塔」だ。

ウナギノボリ

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 皆さんこんにちは、乙葉しおりです。

 私の通う学校ではもうすぐ修学旅行があるんですが、小学校、中学校、高校と、すでに何らかの修学旅行を経験された方は、どのシーズンにお出かけしていたでしょうか?

 多くは5月から6月か、9月から10月にかけて集中しているそうなんですけど、これは連休で観光客がにぎわう時期を避けた結果だといわれています。

 ちなみに修学旅行に行く学年も学校によって差があるようで、進学校ですと受験に集中するために1年生で修学旅行……なんていうこともあるみたいですよ。

 さて、その修学旅行の行き先はと言えば、これも地域や学校によって千差万別なんですけれど、「京都奈良の寺社仏閣巡り」、とりわけ「金閣寺」を連想する方が多いのではないでしょうか?

 正式には「鹿苑寺(ろくおんじ)の舎利殿(しゃりでん)」と呼ばれる金閣寺は、今から700年以上前の5月13日(旧暦4月16日)に上棟式が行われたという大変歴史のある建造物なのですが、残念ながら1950年に焼失し、現在の建物は1955年に復元されたものです。

 名前の通り金色に輝くその美しさから「京都三閣」の一つとして数えられる金閣寺ですが、あとの二つは何か皆さんはご存じですか?

 「銀閣寺」こと慈照寺(じしょうじ)は簡単に思い浮かぶと思うんですけど、もうひとつはなかなか難しくて……調べなくてもご存じという方は、すでに一度は拝観された方なのでは?

 興味がありましたら一度調べてみてください、私も一度は拝観してみたいところです。

 ではここで、朗読倶楽部のお話……4度目の大会出場の思い出、第2回です。

 朗読倶楽部の結成からそろそろ半年を迎えようという10月中旬のこと、4度目の大会を控えた私たちは今までの積み重ねから、少しずつですが余裕に似た自信を持てるようになっていました。

 「今までの入賞歴や校内活動の実績なら、正式な部への昇格も夢じゃない」という部長さんは、意気揚々と学校側へ交渉に出かけたのですが……。

 先生、みかえさん、そして私は、すんなり部として認められるとは思っていませんでしたが、帰ってきた部長さんの表情から事態がもっと深刻なものになっていることを嫌でも気づかされてしまったのです。

 学校側の回答は、私たちに激しい動揺をもたらしました。

 「入賞してはいるが、優勝とは言わずとも上位の賞が一つもない」

 「現在までの実績では、実績としてはかなり不足している」

 「校内の活動は、まだ評価できるところに至っていない」

 「そろそろ存続成否の期限が迫っていると考えてほしい」

 厳しく見られていることは予想していたとおっしゃった先生も、「ここまでとは」と、考え込んでしまったほどです。

 「朗読館」の活動が評価してもらえるか分からない以上、「期限」までにこの状況を逆転する確かな方法は、結成当時に先生が応募した五つの大会のうち、残っている二つでなんとしても上位入賞を狙うほかありません。

 そして、4度目の大会は目前に迫っていて……。

 私は、つい先ほどまで心の中にあった「余裕」の文字が、全て「焦り」に書き換えられてしまうのを感じていました……と、いうところで、今回はここまでです。

 次回もまた、よろしくお願いしますね。

■しおりの本の小道 幸田露伴「五重塔」

 こんにちは、今回ご紹介する一冊は、幸田露伴さんの「五重塔(ごじゅうのとう)」です。

 1891年から約半年の間、新聞紙上で連載され、翌1892年出版の「小説 尾花集」に収録されました。

 五重塔といえば奈良の法隆寺や日光東照宮など、各地で国宝や重要文化財に指定されていますが、このお話に登場する五重塔は東京都台東区谷中(やなか)にある天王寺にかつて存在した「谷中五重塔」がモデルとされています。

 大工の十兵衛さんは素晴らしい腕を持ちながらも世渡り下手で、職人気質が強いゆえに仕事が遅いこともあって評価されず、周囲からは「のっそり十兵衛」とあだ名されながら貧しい生活を送っていました。

 そんなある日、谷中の感応寺というお寺に五重塔を建立するという話が持ち上がります。

 十兵衛さんは、この大仕事をやり遂げれば自分も歴史に名を残せると考え、住職の朗円上人(ろうえんしょうにん)さんのもとへ直接談判に乗り込みました。

 住職さんは、十兵衛さんがお世話になっている棟梁「川越の源太」さんに五重塔の建立を託す予定でいましたが、十兵衛さんの確かな腕と情熱を理解し、2人の大工さんに「譲る心を持って」話し合うことで決めるようにと諭します。

 住職さんの心をくんだ源太さんは、十兵衛さんに共同建築を提案しますが、十兵衛さんは自分一人で全うしなければ意味がないと首を縦に振りませんでした。

 結局、源太さんが折れる形で十兵衛さんが仕事に取り組むことになったものの、源太さんの奥さんやお弟子さんたちはもちろん、十兵衛さんの奥さんのお浪さんも、「世話になった恩を忘れて抜け駆けして」と怒りだしてしまったのです……。

 どんなに腕のいい大工さんでも、五重塔のような大きな建物を一人で建てることはできません。

 実績のない十兵衛さんには資材調達のつてもなく、恩義に背いてしまった彼に付いていこうという職人さんもいません。

 そんな十兵衛さんと周囲の人たちのすれ違いの結末は……お話の最後に住職さんが筆を振るった書の内容に、すべてが込められているように思います。

 ※本コラムをしおりさんが朗読する「乙葉しおりの朗読倶楽部」がiPhoneアプリ「朗読少女」のコンテンツとして有料配信しています。

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