悠木碧:アニメ「薬屋のひとりごと」 猫のような猫猫を演じるリズム 「立てどころ」を意識

「薬屋のひとりごと」で猫猫を演じる悠木碧さん
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「薬屋のひとりごと」で猫猫を演じる悠木碧さん

 小説投稿サイト「小説家になろう」から生まれた日向夏さんのライトノベルが原作のテレビアニメ「薬屋のひとりごと」が、日本テレビ系で10月21日深夜から2クールにわたって放送される。シリーズ累計発行部数は2400万部以上の人気作で、“毒見役”の少女・猫猫(マオマオ)が、宮中で起こるさまざまな難事件を次々に解決する姿を描く。ドラマCDなどで主人公・猫猫を演じてきた人気声優の悠木碧さんがアニメでも同役を演じる。悠木さんに同作への思い、収録について聞いた。

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 ◇懐かない猫のように

 「薬屋のひとりごと」は、ライトノベルがヒーロー文庫(イマジカインフォス)から刊行されており、コミカライズも人気を集めている。アニメは「魔法使いの嫁」などの長沼範裕さんが監督を務め、TOHO animation STUDIOとOLMがタッグを組んで制作する。

 同作の舞台は、とある大陸の華やかな後宮で、猫猫は美形の宦官・壬氏(ジンシ)と共に陰謀やウワサのひしめく後宮で起きる事件に巻き込まれていくことになる。

 「華やかな世界、地に足が付いた人々の生活の対比が、さまざまな事件を通してしっかり描かれている作品で、人々の思い、美しさの裏も描かれています。華やかな後宮の人々の営みを客観的な視点で描かれているところも魅力的です。身分の違いによって。見えてくるものが違ったり、だからこそ気付く謎があります。猫猫は十把一絡に扱われているからこそ見える真実があり、壬氏からしか見えないものもあって、視点の違う人たちが謎を解決していくところが面白いんです。シャーロック・ホームズもそうですが、推理もののバディー関係はありますが、補佐するワトソンのポジションの壬氏の位が高いというのは、これまでの推理ものと一味違った楽しみ方をしていただけるポイントだと思っています」

 悠木さんは、猫猫の印象を「懐かない猫感があるんです」と語る。

 「やっぱり一番は可愛いところです。おてんばというよりも、それを超えてやんちゃで、中性的な可愛さがあります。誰にもこびないところにひかれます。誰に対してもニュートラルに接しようとしているところが演じていて見せどころですし、頑張りどころになっているのは、推理パートです。アニメを“ながら見”している人も多いと思うのですが、流し聞きでも推理が分からないようにしないといけないのが難しくもあり、とても楽しいです。リズムがつかめると、きた!となる瞬間があります。壬氏たちと一緒だと、リズムがどんどん取りやすくなります。」

 猫猫はモノローグが多いキャラクターでもある。推理はほぼモノローグだ。

 「モノローグは、かなり多いです。猫猫は、推理を人に話すことはほぼないですし、彼女の頭の中で推理が行われています。薬草を見つけてワー!となっている時以外は、落ち着いていて、傍観しています。モノローグでどこを立てて、どこを引っ込めるかのバランスが難しく、やりがいがあります。リズムが崩れると、作品の世界に入れなくなりますし、見ている人の鼓動とリズムが合えば……と思いながら演じています。難しいけど、やりがいがあってすごく楽しかったです」

 猫猫は達観したようなところもあり、そこが魅力的でもある。

 「第1話の猫猫は野良猫みたいです。親猫と突然離れた野良猫の子供のようで、その野良猫があった子がどんどん懐いていく、変化が可愛いところもあります。男女共に感情移入できる部分もあるのかな?と思っていまして、本人も性別感はあまり意識しないで生きているのかもしれません。仕事がすごくできて、格好いい。薬草のことで舞いあがっている時以外は、頼れる存在です」

 野良猫のような猫猫も変化していく。

 「猫の懐き具合のように心の変化があります。でも、突然ではなく、変化には理由があって懐いていきます。心を開くまでいかないのですが、認めていくような。その変化には一つ一つ理由があるので。そこが丁寧に描かれていて、アニメでは画(え)が芝居しているところもあるので、見どころになっています。表情、指先、葉が落ちる、影が落ちる……などで、壬氏との距離感を表現していて、すごく美しいので楽しみにしていてほしいですね」

 ◇“壬氏”大塚剛央との掛け合いでなじむ

 猫猫の飼い主となる壬氏を演じるのは大塚剛央さんだ。大塚さんと共演する中で刺激を受けた。

 「艶っぽい声の時があれば、スポーティーな時もあって、でも壬氏として一つにまとまっていて、壬氏の中の少年の部分、それを律してきちんと仕事をするというグラデーションがすごく美しい……と思いながら隣で一緒にお芝居させていただいていました。大塚君と一緒に収録して、自分の猫猫がどう当てはまるかが、すんなり分かっているところがあり、大塚君がアニメの大黒柱になってくれたと感じています。ドラマCDの時から演じているのは私だけなのですが、画が可愛いので、私も少し甘さを抜いていくなどバランスを取っています。何を基準に判断したらいいのかすごく難しかったのですが、壬氏が一緒のシーンは、迷わずに最適解を導き出せました。壬氏と掛け合うことで、猫猫がなじんでいくところもあって、ありがたかったです」

 猫猫の印象的なせりふに「これ毒です」がある。アニメでもこのせりふを楽しみにしている人も多いはずだ。

 「猫猫は、決して響かない声というところもありまして、これまでもコミックスのCM、ナレーション、ドラマCDなどでこのせりふを言わせていただいていますが、ニュアンスの違いが毎回難しいと感じています」


 猫猫は「毒と薬に異常に執着を持つ」キャラクターだ。悠木さんに今作で「異常に執着したこと」を聞いてみると……・

 「せりふの立てどころです。言葉のどこを強調するかで、意味が変わって聞こえてしまうのですし、今回は言葉で聞かせて、推理を分かっていただかないといけないところがすごく多い作品です。猫猫は感情を表現する時は、言葉が少ないんです。どこを立てて、どこを引っ込めるか?と執着しました。そこは何度も確認しながら収録しました」

 アニメの初回は、日本テレビでは第1~3話が一挙放送されることも話題になっている。

 「第3話まで見ていただけたら、この作品の面白さが120%伝わると思っています。面白いポイントが全部詰まっているので、以降がきっと楽しみにしていただけるはずです。画がなくても十分に面白いお話ですが、画がつくことで後宮の華やかさ、人が真面目に積み上げていく生活の営みなどの対比が視覚から入ってきて、よりすてきな作品になっています。想像の上をいく映像になっています。音もすごくいいんです。ぜひ楽しみにしていてください!」

 アニメならではの映像美も堪能できるはず。猫のような猫猫の活躍を楽しみにしてほしい。


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