伊藤淳史:木南晴夏と夫婦役で共演 「一番大事なのは家族」と断言

スペシャルドラマ「ドラマW 今日、帰ります。」に出演した伊藤淳史さん(左)と木南晴さん
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スペシャルドラマ「ドラマW 今日、帰ります。」に出演した伊藤淳史さん(左)と木南晴さん

 俳優の伊藤淳史さんが主演、女優の木南晴夏さんがその妻を演じるWOWOWのスペシャルドラマ「ドラマW 今日、帰ります。」が、10日午後10時にWOWOWプライムで放送される。「第1回WOWOW新人シナリオ大賞」を受賞した圓岡(まるおか)由紀恵さんの「赤いトマト」が原作。主人公の銀行員・森田克博(伊藤さん)が、突然出て行った妻・千佳(木南さん)と別居生活を送る中で、“厄介なおばあさん”として有名な客・近藤波子(夏木マリさん)と出会い、人生や家族に対する心情が変化していく様子を描く。伊藤さんと木南さんに、役作りやドラマの見どころ、10年後の自分について聞いた。

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 ◇自分とは違うタイプだが「演じがいがあった」

 人生の幸せや家族のあり方を問いかけてくる物語の台本を読んだ印象を、伊藤さんは「僕も家族がいて子供もいますが、(克博は)決定的な悪いところがあるわけでもなく、人生のプランを立て、しっかり養っているのに、『なんでこういうことになってしまっているの?』という部分を理解するのに、少し時間がかかる面もありました」と明かす。

 「家庭に限らず、当たり前だからこそないがしろにしてしまうことは、誰しもにあるのかもしれない。(ドラマを見る)皆さんがそれぞれ、身近に感じてもらえるのではと思い、演じていても演じがいがありました」と振り返る。

 木南さんは「家族の話で、自然の中で撮影できることや派手な事件が起きるわけではなく会話劇でつなげていくところに魅力を感じました。夏木さんのキャラクターもすてきだし、空気感が好きだなって思いました」と世界観に魅了されたという。

 演じた役について、伊藤さんは「自分とはちょっと違うタイプ。大切にするポイントにズレはあるけど、『こういう人、いるだろうな』とキャラクターとしては分かりやすかった」と理解を示し、「大切なものに気づける人なので、特に複雑な感情も抱かずに演じました。現場でも楽しく、共演者やスタッフの皆さんと作っていけ、最後まで同じ気持ちで役に向き合えていけました」と充実感をにじませる。

 妻の千佳を演じた木南さんは「無理やりキャラクターを考えなくてもいい役柄だったので、素直に(台本を)読んだままのイメージでやりました」と振り返る。

 ◇虫が苦手で悪戦苦闘した撮影

 撮影で印象に残っていることや大変だったことを聞くと、伊藤さんは共感した部分として「虫が苦手で触れない。ここだけ当て書きしてくださったのかなって(笑い)。バッタやカマキリをつかむんですが、よくやったなって……」と苦労を明かすも、「(虫嫌いは)ちょっと乗り越えられたかな。これからわが子が育ち一緒に森へ行くこともあるでしょうが、この作品のお陰で家族のためになるものを作れたかな」と笑顔を浮かべていた。

 隣で聞いていた木南さんは、「バッタやコオロギぐらいの大きさなら大丈夫」と虫は平気といい、「カマキリまでいくとちょっと怖い。バッタとかはそんなに“意思”を感じないですけど、カマキリは威嚇して怒っている感じなど、こちらに対する何かを感じて怖い」と語る。

 そんな木南さんは田舎での撮影が多く、「気持ちよかったです。子役の(小林)未来君と虫を捕ったりするシーンがあって、(河野)うさぎさんが捕るのが早い。ほわーんとしている穏やかな方なのに、そのときだけ動きが速くて、そのギャップが面白かった」とほほ笑みながら明かす。

 今作のメガホンをとったのは、映画「デイアンドナイト」などを手がけた藤井道人監督。木南さんは「柔らかくて優しい方ですが、自分のラインのようなものがあって、基本的に1回ではオーケーが出ませんでした。クレームじゃないですよ(笑い)」と印象を語り、「優しいけどオールオーケーというタイプではなくて、きちんと作るものは作ってくれる信頼感はありました」と絶賛。

 聞いていた伊藤さんも大きくうなずき、「説明が的確でポイントが分かりやすい。出来上がりを見てもすごく面白くなっていたので、ついていって良かったと思いました」と感謝していた。

 ◇10年後の自分は? 人生の幸せとは…

 劇中には“エンディングノート”ならぬ“ビギニングノート”が登場するなど、人生を考えさせられる描写が数多くある中、「自身の10年はどうなっていると思うか?」と聞くと、伊藤さんは、「できれば今と一緒でいたい。10年後にまた同じことを聞かれて『現状維持』と思えている10年後がいい」と回答。

 理由については、「こんな楽しい作品に出合えるなど、充実した生活を送らせてもらっているので、10年後にまた同じ感覚を抱けていたら幸せ。向上心がないと言われたらそれまでかもしれないけど(笑い)」と自虐的に説明し、周囲を笑わせた。

 「私も一緒かな」と同意した木南さんは、「健康第一で、元気に夏木さんのように仕事ができていたらいいなと思います」と笑顔で語る。

 幸せや家族のあり方を投げかけられる物語だが、木南さんは「私もそうですが、仕事第一という人は多いと思う。もちろん家族を大事にはしているけど、スケジューリングとかそういう問題から仕事を優先しなきゃいけないことも」といい、「仕事第一で幸せならいいのですが、『仕事第一で果たしていいのか』という疑問が生まれるようなら、そこに一番の幸せはないのかもと最近思うようになりました」と心境の変化を明かす。

 伊藤さんは「大切にするものの優先順位は大事ですが、正解はない。仕事が一番という人もいるでしょうが、僕は家族。家族がいて自分がいるというところの中に仕事がある。自分の中で改めて考えるだけでも違うと思う」と作品のテーマについて言及しつつ断言した。

 続けて、「(自分と木南さん演じる)この夫婦が確認し合わなかったことですれ違いが起きているのを見て、皆さんに何か感じていただいて、何かが動いていったりするとうれしいなと思います」とメッセージを送った。

 ドラマは、「第1回WOWOW新人シナリオ大賞」の受賞作。東京の銀行で働く森田克博(伊藤さん)は月1回、山梨にある別居中の妻・千佳(木南さん)の実家に通っている。千佳からは「山梨で一緒に暮らしてほしい」と言われ困惑する中、銀行で“厄介なおばあさん”として有名な波子(夏木さん)の担当になる。キツい言葉を浴びせる波子だが、週末に義父の田端恒三(西岡徳馬さん)が営む農業を手伝うよう提案。さらに“家族と一緒に暮らすためにやるべきこと”が書かれたノートを手渡す……という物語。3月10日午後10時にWOWOWプライムで放送される。23日午後1時からWOWOWプライムでリピート放送。また、WOWOWメンバーズオンデマンドで配信もしている。

 (取材・文・撮影:遠藤政樹)

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