人気グループ「V6」の岡田准一さん主演の映画「散り椿」(木村大作監督)が、28日からTOHOシネマズ日比谷(東京都千代田区)ほか全国で公開される。岡田さん演じる主人公の浪人が、妻への愛と正義を貫く姿を描く。撮影も担当した木村監督の、富山、滋賀や長野でのこだわりの全編オールロケ映像や、岡田さんが殺陣師の久世浩さんと作り上げた、今までの時代劇とはひと味違う殺陣を堪能できる。
ウナギノボリ
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享保15(1730)年。かつて藩の不正を訴え出たが認められず、故郷・扇野藩を追われた瓜生新兵衛(岡田さん)は、病に倒れた妻・篠(麻生久美子さん)から「采女(うねめ)様を助けていただきたい」という最後の願いを託される。采女とは、扇野藩時代、友人であり盟友、篠を巡る恋敵でもあった榊原采女(西島秀俊さん)。実は采女は、新兵衛が藩を追われた一件にも関わっていた。新兵衛は、篠の願いをかなえるために故郷に戻るが……というストーリー。篠の妹に黒木華さん、弟に池松壮亮さんが扮(ふん)するほか、扇野藩城代家老の石田玄蕃を奥田瑛二さんが演じる。
木村監督にとっては「劔岳 点の記」(2009年)、「春を背負って」(14年)に続く3作目の監督作。葉室麟さんの同名小説を、同じく葉室小説の映画化作「蜩(ひぐらし)ノ記」(14年)で監督・脚本を務めた小泉堯史(たかし)さんが脚色した。先ごろカナダで開かれた第42回モントリオール世界映画祭では、グランプリに次ぐ審査員特別賞を受賞した。
木村監督をして「岡田君は俳優だから、精神で殺陣を考えている」と言わしめた殺陣には、確かに刀を握る者の心情が表れていた。例えば、散り椿の下での新兵衛と采女の一騎打ち。緊張感みなぎる殺陣は対話しているようでもあり、やむを得ず刀を交えねばならない2人の複雑な心境が伝わってきた。
雨の中でのクライマックスシーンは、常に冷静で感情を表に出さなかった采女の見せた憤然たる表情と刀さばきに目を見張った。
木村監督ならではの自然を切り取った美しい風景も効果的に挿入されている。大切なものを守ろうとする人々の覚悟や、愛する人への思いが流れている。見終えた後、それらが心にじわじわと迫ってきた。(りんたいこ/フリーライター)
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