朗読少女:乙葉しおりの本の小道 第71回 相田みつを「にんげんだもの」

「にんげんだもの」(作・相田 みつを)の表紙(左)と乙葉しおりさん
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「にんげんだもの」(作・相田 みつを)の表紙(左)と乙葉しおりさん

 美少女キャラクターが名作を朗読してくれるiPhoneアプリ「朗読少女」。これまでに50万ダウンロードを突破する人気アプリとなっている。「朗読少女」で、本の朗読をしてくれるキャラクター、乙葉しおりさんが名作を紹介する「乙葉しおりの本の小道」。第71回は相田みつをの「にんげんだもの」だ。 

ウナギノボリ

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 皆さんこんにちは、乙葉しおりです。

 皆さんは現在、書道を学んでいますか?

 私は中学までは授業で習っていたんですけれど、高校生になってからは必修科目にないこともあって、ちょっとごぶさたしていました。

 そのことを思い出したきっかけは数日前の放課後、いつものように朗読倶楽部の部室に入ったら、ちなさんがすずりで墨をすっていたからなんです。

 初等部のちなさんは、中等部の部長さんや高等部のみかえさんと私よりも早く授業が終わるので、クラブ活動が始まるまでの時間つぶしに習字の宿題をやっていたそうなんですけれど……既に書き上げられて乾燥を待っている作品に目を移すと、ちょっと変わった作品が並んでいました。

 習字と言えば大体2文字か4文字なんですけど、彼女の作品は詩になっていたんです。

 その内容はご存じの方も多い「にんげんだもの」。

 独自の筆致で書かれる本物と違って習字の授業らしく書体が楷書になっていたり、半紙サイズに多くの字を書くために細筆を使ったりしているんですけれど、ちょっと面白い課題ですよね。

 きっとこの課題を考えられた担任の先生は、この詩の作者さんのお誕生日をご存じだったんだと思います。

 そんなわけで5月20日は、書家にして詩人の相田みつをさんのお誕生日です。

 1924年、栃木県足利市に生まれた相田みつをさんは、毎日書道展に1954年から7年連続入選するという華々しい経歴を持つ一方、誰にでも読める独自の書体で自らの言葉を語る作風を確立して、「書の詩人」と呼ばれるまでになったんですよ。

 ではここで、朗読倶楽部のお話……4度目の大会出場の思い出、第3回です。

 大会直前にもたらされた朗読倶楽部の危機的状況……。

 今回を含めてあと2回の大会で上位入賞ができなければ、学校に部活動として認められることはなくなってしまうと分かった私たちは、リラックスしていたはずの気分から一転、緊張に包まれることになってしまったのです。

 その日から大会までの私たちは、練習時間を大幅に増やし、帰りが夜遅くなることも多くなりました。

 そのためみんながそれぞれの家族に注意されるようになりましたが、「大会までだから」と説得したほか、さらに時間を取るために「朗読館」を一時的にお休みし、休みの日にも登校して練習を続けました。

 これは後になって聞いた話ですけど、怒ったちなさんの機嫌を戻すのにみかえさんが苦労したとか……。

 それなのに、上達するどころかミスを繰り返すようになったり、読み上げが速くなりすぎたりと、焦りばかりが先立ってしまって……部室の雰囲気もどんどん重苦しいものになっていきました。

 そして、迷走する私たちはその出口を見つけることができないまま……大会の当日が、やってきてしまったのです。

 ……と、いうところで、今回はここまでです。

 次回もまた、よろしくお願いしますね。

■しおりの本の小道 相田みつを「にんげんだもの」

 こんにちは、今回ご紹介する1冊は詩人・書家の相田みつをさんによる「にんげんだもの」です。

 人間が生きていく上で大切なことを、温かみのある書体と誰にも分かる言葉で詠いあげるこの詩集は、1984年に発表されて以来200万部以上を発行する大ベストセラーになりました。

 04年に放映された、相田みつをさんの生涯を描いたドラマのタイトルに本作の題名が採用されたことからも、この「にんげんだもの」が代表作であることがよくわかりますよね。

 では、その内容はどのようなものなのでしょうか?

 ここで表題にもなった有名な詩の一節をご紹介します。

  つまづいたって

  いいじゃないか

  にんげんだもの

  みつを

 いかがですか?

 ごく短い言葉の中にも、いろいろなことを考えさせられる詩ですよね。

 平仮名の温かみもあって、すごく癒やされる気持ちになれます。

 この作品にはこうした心のありようについて歌われた詩が、60作以上収録されているんです。

 また、相田みつをさんの詩集の魅力はその言葉を「読む」だけにとどまらず、筆で描かれた「書」として「見る」ことでも楽しめる点にあります。

 この記事のように活字で作品を表すだけでは、その魅力は半分だけしか伝えることができません。

 興味をもたれた方には、ぜひ一度、実際の「書」を見てみることもおすすめしたいです。

 ちなみに、温かみのある筆致とは裏腹に作品に対する姿勢は一切の妥協を許さない大変厳しいもので、一つの作品を完成させるために何百枚もの書き直しを続け、印刷によるわずかな墨の色合いの変化を許すことなく再度印刷をさせるなど、寝食を忘れて作品に没頭していたといわれています。

 「一生勉強 一生青春」を座右の銘としていた相田みつをさんの作品。

 一度読んで、見て、自分の心を振り返ってみるのも良いのではないでしょうか。

 ※本コラムをしおりさんが朗読する「乙葉しおりの朗読倶楽部」がiPhoneアプリ「朗読少女」のコンテンツとして有料配信しています。

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