注目映画紹介:「HOME 愛しの座敷わらし」 問題を抱えた家族を妖怪にからめてカラリと描く

「HOME 愛しの座敷わらし」の一場面 (C)2012「HOME 愛しの座敷わらし」製作委員会
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「HOME 愛しの座敷わらし」の一場面 (C)2012「HOME 愛しの座敷わらし」製作委員会

 「明日の記憶」などで知られる荻原浩さんの小説を、和泉聖治監督が大人気テレビシリーズ「相棒」でタッグを組んで久しい水谷豊さんを主演に据えて映画化した「HOME 愛しの座敷わらし」が28日に封切られた。東京から岩手支社に転勤となった高橋晃一(水谷さん)が妻と中学生の娘と小学生の息子、さらに母親を引き連れて引っ越してきたのは、築200年の古民家。盛り下がり気味の家族の空気を、能天気な晃一はなんとか上向きにしようとするが、あまり効果はない。そんな中、晃一以外の4人が、家の中にただならぬ気配を感じ始める。どうやら家には“座敷わらし”が居ついているようなのだ……というストーリーが展開する。

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 一家の大黒柱の左遷、本社の上司とのもめごと、妻の不安や更年期障害、娘はいじめに遭い、息子は病気、そして母の認知症の疑いと、どれも深刻な問題だが、それらを座敷わらしという“妖怪”にからめ、ユーモラスにカラリとした雰囲気で描いていく。

 晃一は妻・史子にときどき「ありがとう」と感謝する。その言葉に妻に対する夫のいたわりが感じられ、見ていて心地いい。その史子を演じる安田成美さんのほんわかとしたコメディエンヌぶりが楽しく、水谷さんも「相棒」でのキレ者刑事・杉下右京とはまた違う、正直で不器用で家族思いの大黒柱の父親役を好演。そもそも今回の映画化は、原作にほれ込んだ水谷さんの発案だという。ほかに、晃一の母で草笛光子さん、娘役で橋本愛さん、息子役で濱田龍臣さんが出演。「遠野ふるさと村」に保存されている築200年の古民家はもとより、撮影場所となった岩手県各地の風景にも見ていて心が洗われるようだ。28日から丸の内TOEI(東京都中央区)ほか全国で公開中。(りんたいこ/毎日新聞デジタル)

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