注目映画紹介:「コーマン帝国」 B級映画の帝王の素顔に迫るドキュメンタリー

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 「B級映画の帝王」はたまた「インディペンデント映画の神」。そんな異名をとる86歳の映画プロデューサーで監督のロジャー・コーマンさんは、安く、早く仕上げ、もうけるをモットーにこれまで監督した作品は50本以上に上り、500本を超える作品をプロデュースしてきた。そんなコーマンさんにカメラを向け、その人物像に迫るドキュメンタリー映画「コーマン帝国」が7日から順次公開される。

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 コーマンさんの作品は、最近でこそDVDなどで見ることができるが、その多くは、低予算ならではの陳腐さのせいか劇場公開されることは少なかった。まあそれが持ち味であるのだが……。それでも「リトル・ショップ・オブ・ホラーズ」(60年)や「アッシャー家の惨劇」(60年)、「血まみれギャングママ」(70年)といった監督作は、現在ではカルト的人気作となっている。

 コーマンさんはまた、のちの名監督、名優を見いだしたことでも有名で、彼の元から巣立った映画人は、ジャック・ニコルソンさん、ロバート・デ・ニーロさん、フランシス・フォード・コッポラ監督やマーティン・スコセッシ監督など超一流がズラリ。彼らがコーマンさんについて語るコメントは実に味わい深く愉快で、とりわけスコセッシ監督がコーマン作品について話したコメントは傑作だ。一方、ニコルソンさんも、最初こそ「安くあげることが最重要で、よくしようという努力がない」などと辛口だったが、終盤、彼が“恩師”に対する謝意を述べながら感極まって涙する場面では、見ているこちらまで思わずホロりとさせられる。

 彼らのコメントの合間には、コーマンさんの代表作の一部がふんだんに流れ、いずれのパートもチープさとどぎつさにあふれている。だが、そこから想像できないほど、コーマン氏本人は物腰柔らかな紳士。その人柄をこの映画で知ったことで、彼の作品をきちんと観賞したくなった。アレックス・ステイプルトン監督にとって今作が初めての長編作。7日から新宿武蔵野館(東京都新宿区)ほかで全国で順次公開。(りんたいこ/毎日新聞デジタル)

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