松本人志:4作目は脱コメディー 新ジャンル開拓に手応え 独占インタビュー

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 映画「大日本人」「しんぼる」「さや侍」の監督を務め、先月には仏・パリの映画の殿堂「シネマテーク・フランセーズ」で3作品が異例の特集上映されたお笑いコンビ「ダウンタウン」の松本人志さんが4作目を準備中という。「松本人志の映画というものが見えてきた気がする。僕にしか撮れない、(今までにない)新たなジャンルがあるんだと思う。それが次の映画でできそうな気がする。楽しみにしていただいていいのではないでしょうか」と自信を見せる松本さんに、4作目が目指すもの、今まで撮った3作品を振り返って、映画にかける思いなどを聞いた。(毎日新聞デジタル)

ウナギノボリ

 −−3作品がパリで特集上映ということですが、手応えはいかがですか?

 3作品ともやりたいようにやったし、納得はしているんだけれど、今改めて感じているのはもっと伸び伸び好き勝手にしていいんじゃないかなあということ。まだ自分の好き勝手にできていない。本当の意味での好き勝手なものをいろんな人たちに見せたいという思いが強くなっている。言葉が通じない海外の人には徹底的にいった方が楽しんでもらえるんじゃないかなと思う。

 −−国境を超えるような映画を作ることで意識していること、大切にしていることはありますか?

 松本人志の世界を追求すること。それには国境はない。僕のワールド。僕の国旗をぶら下げていればどこに行っても関係ない。僕は日本人だけれど、だからといって僕が作る映画が日本映画だとは思っていないし、邦画というくくられ方すら必要はないと思う。「あんな映画はあいつしか撮れないよな」って言われる作品を撮らないと僕はダメなんだと思う。

 −−4作目で撮れそうな「新しいジャンル」とは?

 僕はコメディー映画は撮りたくない。そもそも「コメディー」というジャンル分けが好きではない。「笑う映画ですよ」って言われている時点で僕はダメなんやろうなって。見た人が面白いって笑えばそれがコメディー映画だと思う。本当に面白い映画を撮りたくて、コメディー映画じゃない面白い映画って撮れると思うんです。僕は元々漫才師なので、お客さんを笑わせるという仕事から始まった。映画を撮っていても『笑わせなくてはいけない』という意識がどこかにあるんでしょうね。そんなことすらも邪魔で。笑わせたいということが笑いの邪魔になっているというか。一生懸命笑いを取りにいかなくても面白いものになると思う。僕はそこを考えすぎていたのかもしれない。

 −−「さや侍」は松本さんにとってどんな映画でしたか?

 1回は映画らしい映画を撮らなくてはいけなくて、通過しないといけない道だった。それが「さや侍」だった。それができたので、これからは好きにやろうかなと思っている。映画を壊したいという思いがあって、どうやったら壊せるのかを常に考えている。(映画を)壊すためには「さや侍」も必要だった。でも、頭の中は4本目の映画のことでいっぱいだから、「さや侍」について語るのはしんどい。

 −−3作品は松本さんにとってまだ「壊し」きれていないのでしょうか?

 改めて(過去の3作品を)見てみると壊し切れてないなって思う。(海外の人に)「日本人でこんなクレイジーなやつがいるんだ」ってどこまで思わせられるかだと思うとまだそこまで及んでいない気がする。だから、脳みそつかまれたような映画を撮ってみたいと思うし、おれが目指すところはそこだと思うんですよね。映画の大きい賞とか、興味がないって言えばうそになるけれど、それはそれとしてそんな人たちをもぶち壊してしまうような、もっと大きなところでやらなきゃというのはありますね。僕はテレビの仕事もやっているし、そこで自分をアピールして映画を撮らせてもらうんだから、逆に映画らしい映画を撮るのは失礼。もっと好き勝手やらないと。中途半端なことはしてはいけないと思う。

 映画ってお金を取らないといけないから、そのためには人気俳優を出したり小説で当たったものを実写化したり、オリジナル作品がどんどんなくなってきている現実があるんだけれど、僕はお客さんが入らなくても許されるタイプの監督なので、逆に好き勝手やらなくてはバチが当たるんじゃないかなと思う。そんな立場にいるのでどんどん追求していこうと思う。映画で赤字になってもその分テレビで稼いでいるし(笑い)。

 −−今までの3作品で「壊し」きれなかったのには何か阻むものがあったのでしょうか?

 社会にいる人間として、やりたくてもできないものがあって、アーティストはそういうものと闘っていかないといけない。僕にも、どこまで壊せるのかという思いがずっとあった。テレビでも“笑い”を壊してきたという自負がある。テレビにはスポンサーがいて、視聴者がいて、放送コードがあってっていう“ルール”があるわけだけれども、映画はそれよりもルールがないので。もっとできるんじゃないかなって思う。

 −−4作目について明かせるところまで教えてください。

 フランスから帰ってきて、企画会議をやりました。正直何も考えていなかったんだけれどしゃべっているうちにいい感じになってきて、撮りたいという気持ちになってきているので続けようかなと思っています。口からでまかせでしゃべっていたら「面白いやんけ」ってなってきました。

 <プロフィル>

 1963年、兵庫県尼崎市出身。お笑い芸人、エッセイスト、映画監督。浜田雅功さんとコンビ「ダウンタウン」を結成。「ビートたけしのエンターテインメント賞」話題賞(07年)を受賞。ブリュッセル国際ファンタスティック映画祭(10年)で映画「しんぼる」(09年)がインターナショナル・コンペティションで審査員特別賞、オービット・コンペティションでグランプリを受賞するなど近年は精力的に映画を制作している。

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