人気アニメ「ガンダム」シリーズのOVA(オリジナル・ビデオ・アニメ)「機動戦士ガンダム サンダーボルト」のテレビエディションが、2月12日からMBS・TBS系の日曜午後5時のアニメ枠“日5”でに放送される。同作は「MOONLIGHT MILE」などで知られる太田垣康男さんのマンガで、「ガンダム」シリーズの“正史”とされている設定とは“別の世界線”を描いている。「サンダーボルト」の独自性を解説する。
ウナギノボリ
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「サンダーボルト」は「ビッグコミックスペリオール」(小学館)で2012年に連載をスタート。一年戦争のサンダーボルト宙域での地球連邦軍とジオン公国の戦い、一年戦争後のジオン残党軍、連邦、南洋同盟の戦いなどが描かれ、プラモデル化されるなど人気を集めている。
今回、全3話のテレビアニメとして放送されるのは、第1部にあたる一年戦争のサンダーボルト宙域の戦いだ。時代は、宇宙世紀0079、地球連邦とジオン公国が戦った一年戦争の末期。コロニーや撃沈された戦艦の残骸が無数に漂い、絶えず稲妻がひらめく暗礁宙域のサンダーボルト宙域が舞台となる。地球連邦軍ムーア同胞団のモビルスーツ(MS)パイロット、イオ・フレミング、過去の戦闘で両脚を失い、ジオン公国軍リビング・デッド師団でエーススナイパーとして活躍するダリル・ローレンツが戦場で対峙(たいじ)することになる。
「ガンダム」シリーズはもちろんフィクションではあるが、“正史”があるとされている。「サンダーボルト」は“正史”にはないオリジナルの設定、MSが登場する。太田垣さんに取材した際に「『サンダーボルト』は、独特の立ち位置の作品です。通常は『ガンダム』の世界観、歴史、設定に準じないといけなくて、細かい設定考証も入ります。『サンダーボルト』は連載開始の段階から『別の世界線で描きたい』とお願いして、始めたんです」「元々パラレルワールドなんです」と話していた。
太田垣さんは、あえて“正史”とは異なる設定で自由にマンガを描こうとした。MSを見ても独自色が色濃く出ている。ダリル・ローレンツの専用機サイコ・ザク(リユース・P・デバイス装備高機動型ザク)は、腕や脚を失ったパイロットが、失われた部位をデバイスに接続し、念じることで、機体を制御する。背部の大型ランドセルに2基のロケットブースターと1基の大型ロケットブースターを装備するなど形状も独特だ。イオ・フレミングが乗るフルアーマー・ガンダムは、「ガンダム」シリーズの企画「モビルスーツバリエーション(MSV)」に登場するフルアーマー・ガンダムと装備が異なる。
第2部以降は、一年戦争終結後の世界が描かれており、連邦、ジオンとは異なる勢力の南洋同盟が登場するなど独自性がより強くなっているようにも見える。太田垣さんは「次に何が出てくるのか分からないワクワクを残したかったので、設定に縛られない作り方をしています」とも語っていた。
「ファーストガンダムのテレビシリーズ、劇場版3部作のその先を描きたくて、『Z』『ZZ』はあまり意識していません。答え合わせのような作り方が嫌なんです。このキャラクターは死んでしまう……と先を意識しないですし、歴史ものをやりたいわけではないんです」と自由な発想で描いている。
“正史”があり、それとはまた異なるとなると、難解に感じるかもしれないが、そんなことはない。「サンダーボルト」は、人間ドラマ、迫力のあるMS戦などマンガとしての魅力にあふれた作品で、“歴史もの”ではないこともあって「ガンダム」シリーズに詳しくなくても楽しめるはず。
それに、アニメ版は、同作を手掛けたバンダイナムコフィルムワークスの小形尚弘プロデューサーが「今見ても、よく手描きで作ったな……となるくらいクオリティーの高い作品」と語るほど映像が美しい。コアなファンではない人も“正史”のことは気にせずに、映像美を堪能できるはずだ。
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