池井戸潤さんの人気小説を実写ドラマ化した「連続ドラマW シャイロックの子供たち」が、10月9日から毎週日曜午後10時にWOWOWで放送される。銀行という組織を通して、普通に働き、普通に暮らすことの幸せと難しさを描く群像劇で、主演を務めるのが井ノ原快彦さんだ。井ノ原さんが池井戸さん原作の作品に出演するのは初めて。脚本を読んで難しさを感じながらも、「この先に見えるのはきっとキラキラした景色なんだろうと思いながら飛び込んだ」と振り返る。本作や演じる役への思いと共に、仕事をする上で大切にしていることを聞いた。
ウナギノボリ
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ドラマは、井ノ原さん演じる銀行員・西木雅博が主人公。ある日、西木が働く東京第一銀行長原支店内で100万円の現金紛失事件が発生。真犯人をひそかに追い始める西木だったが突然失踪し、やがて事件の裏に隠された「不正」と西木の失踪の真相が明らかになっていく。
池井戸さん原作の作品には初参加ながら、主演も務めることになった井ノ原さん。「考えたこともなかったので、うれしさの後にじわじわと大変だろうなと感じるようになりました。それから脚本を読んで確信に変わって(笑い)。ただ、これまで活動してきて簡単なことは一つもなかったですし、難しいことの先にあるもののほうが輝いて見えたりする。この先に見えるのはきっとキラキラした景色なんだろうと思いながら飛び込みました」と明かした。
西木の人物像については、「常にヒーローではなく、誰かにとってのヒーロー」のようだと説明。「すごくつかみどころがない役ですが、分かりやすく言えるのは部下に慕われている人だということ」と語る。
「西木は部下が困ったり、喜んだりするときにちゃんと関わり合っていて、話を聞いてあげる時間がとても長いんです。ただ、部下に信頼されているからといって、上司からもそうかと言われたらまた違う部分もあって。良い上司ではあるけど、良い部下ではないかもしれません。銀行という組織で立ち回っていく中で、飄々(ひょうひょう)としたところがある人物だと感じていて、どうやったらそれを出せるかと、細かいところまで監督と話し合いながら、日々、西木像を作っていました」
後輩としっかり向き合う西木のせりふには、「言い方一つとっても全然違うから」という言葉も。井ノ原さんは「後輩から相談を受けたとき、本当はうまく気分を上げてあげたいのですが、自分はなかなかそうできなくて。だから、なんて言おうかすごく考えるんですよ。そういったところは少し西木と通じるところがある気がします」と明かす。
「自分が若いころ、後輩に対して『もっと頑張れ』と言ってしまったことがあるんです。でも、自分は先輩からそう言われて腹を立てたこともあったし、刃向かってしまったこともありました。だから、もっと肯定的にアドバイスしてあげられたらいいなと。その点、西木は今の時代に合っているというか、『もっと頑張れよ』じゃなくて『もう頑張ってるだろ』と言える人。西木のような伝え方ができたらいいですよね」
そのためには「やっぱり時間をかけて人と話さないと、自分のことも話してあげられないし、その人のことをよく見ていないといけない」と井ノ原さん。「僕にはすてきな先輩が多くいるので、皆さんと話したときにうれしいな、かっこいいなと感じたことも参考になっている。自分がそう感じたことを、後輩にも伝えられたらと思っています」
西木は「お金で人や会社を生かしていく仕事がしたい」と、入社時の思いを変わらずに持ち続けている人物でもある。西木を演じる井ノ原さんに、仕事をする上で大切にしていることを聞いてみた。
「日々変わっていくものではありますが、今は無理せずに、精神と体の健康を保つことですかね。もちろんストイックであることも大事ですが、主演をやっていると、時間通りにみんなが集まって仕事をして、『お疲れ様』と帰っていくのは、当たり前のようですごく大変だと感じるんです。暑い中、汗をかきながら撮影のために集まって、実はそれだけでもすてきなこと。寝る間を惜しんで準備するスタッフの姿も見ていますし、まずは感謝の気持ちをもって、頑張ってくれてありがとうと感じています」
しかし、そう考えられるようになったのは、ある程度年齢を重ねたからこそ。「自分が憧れる先輩は、一つ一つのことを丁寧にやっていて、なおかつ無理していない。無理してもきっといいことはないと思いますし、できないことはできないと言ったほうがいい。全てを自分でやろうとせずに、みんなで頑張る方向にもっていけたらいいなと。だんだんと、そうできるようになってきたのかもしれないです」と話す。
大人になってから“出世”だけが全てではないことにも気づき、「低くても飛び続けていることが大事」と井ノ原さん。「できれば関わってくださる人、応援してくださる人には幸せでいてほしいですし、そう思ったら自分も幸せじゃないと」と思いを語った。
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