士郎正宗さんのマンガ「攻殻機動隊」が原作のアニメ「攻殻機動隊 SAC_2045」を劇場版として再構成した「攻殻機動隊SAC_2045 持続可能戦争」が、11月12日から2週間限定で公開される。「SAC_2045」は、「攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX(S.A.C.)」シリーズの神山健治さんと「APPLESEED」の荒牧伸志さんが監督を務め、シリーズで初めてフル3DCGアニメとして制作されたことも話題になった。日本でも3DCGアニメが定着しつつある中で、アニメを手がけるProduction(プロダクション)I.Gの石川光久社長は「富士山を目指した」と語る。富士山とは一体!?
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「攻殻機動隊」は、1989年の原作コミックを起源として、多数の映像化が展開されている人気作品。押井守監督が手がけた劇場版アニメ「GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊」「イノセンス」のほか、「攻殻機動隊S.A.C.」シリーズ、「攻殻機動隊 ARISE」シリーズなどが制作されてきた。「SAC_2045」は、Production I.GとSOLA DIGITAL ARTSが制作。全12話のシーズン1が4月からNetflixで配信されており、シーズン2の制作も発表されている。劇場版は、映画「新聞記者」「ヤクザと家族The Family」などの藤井道人さんが監督を務め、シーズン1に新たなシーンを加え、再構成する。
「SAC_2045」は「攻殻機動隊」の初のフル3DCGアニメということもあり、制作が発表された際、賛否両論があった。石川社長は、シーズン1について「富士山で例えると3合目くらい」と厳しめに評価する。
「富士山を登るイメージだった。頂上を目指さないといけないが、シーズン1は3合目だった。シーズン2は5合目を越えて、7、8合目まで行けた。CGは、技術の進化、積み重ねがあるので、最初は難しい部分もあった。いきなり頂上まではいけなかったが、シーズン2を見てから評価していただきたい」
Production I.Gは、作画(2D)によるハイクオリティーな映像に定評がある。それでも3DCGに挑戦しようとした。
「作画には、日本のアニメーターの強みがある。平面を立体として描ける。後藤(隆幸)も西尾(鉄也)も黄瀬(和哉)もやっぱりすごいんです。ただ、メカ、動き、モブのシーンを手で描くのは、苦しくなっている。作画は、個人の技量の集積なので、作品が完成すると、次の作品でリセットされてしまう。CGは技術、経験値を積み重ねて、どんどんバージョンアップしていける。だからいきなり頂上にはいけなかった。制作する中で加速度的に向上していった」
「攻殻機動隊」を3DCGで作るのは挑戦だったが、日本のアニメ業界の未来も視野に入れ、あえて挑戦した。
「I.Gだけでなく、日本のアニメ制作会社としてCGをきちんとやっていかないと、世界に出た時にマズいという危機感がある。後れを取らないようにしないといけない。作画が強いから、特化してしまい、CGになかなか日が当たらない。それでは5年後、10年後にどうにもならない。日本の3DCGアニメは、ピクサーのように歴史がない。制作環境だけを用意しても難しい。魅力的な作品がないとチャレンジできない」
「攻殻機動隊」のようなビッグタイトルで挑戦することに意味があった。「富士山」に例えたことにも意味がある。
「富士山には、日本的な美しさがある。まずは富士山を目指す。エベレストを目指すのではなく、やっぱり富士山なんです。世界を目指すなら富士山じゃないといけない。日本のアニメは、キャラクターの造形が魅力で、富士山のよさはたたずまいです。作画でもたたずまいを表現するのが難しく、たたずまいを描けるかがアニメーターの生命線です。CGでもたたずまいを表現できれば、世界で戦える。忘れてはいけないのが、ずっと富士山を目指すこと。日本のアニメのマインドを大事にしないといけない。いろいろなものをうまく取り入れるのは、小手先のようであまり好きではないですし」
シーズン2はどんな進化を見せてくれるのだろうか? さらにその先も……。今後の展開にも期待が高まる。
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