注目映画紹介:「HUMAN LOST 人間失格」太宰治の名作を大胆に再構築 SFダークヒーローアクション

劇場版アニメ「HUMAN LOST 人間失格」の一場面 (C)2019 HUMAN LOST Project
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劇場版アニメ「HUMAN LOST 人間失格」の一場面 (C)2019 HUMAN LOST Project

 太宰治の名作「人間失格」が原案の劇場版アニメ「HUMAN LOST 人間失格」(木崎文智監督)が、11月29日にヒューマントラストシネマ渋谷(東京都渋谷区)ほかで公開される。原案を大胆に再構築した、SFダークヒーローアクションが描かれる。

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 「踊る大捜査線」「PSYCHO-PASS サイコパス」シリーズなどの本広克行さんがスーパーバイザーを務め、小説「天地明察」などで知られる作家の冲方丁さんがストーリー原案、脚本を手がけた。「GODZILLA」シリーズなどのポリゴン・ピクチュアズが製作。

 舞台は、医療革命で死を克服し、環境に配慮しない経済活動と19時間労働政策の末、GDP世界1位、年金支給額1億円を実現した昭和111年の無病長寿大国・日本。大気汚染と貧困の広がる環状16号線外(アウトサイド)で薬物に溺れ怠惰な暮らしを送る大庭葉藏が、暴走集団と行動する謎の男、堀木正雄と共に特権階級が住む環状7号線内(インサイド)に突貫。激しい闘争に巻き込まれ、異形化するヒューマン・ロスト現象を起こした異形体「ロスト体」に遭遇する……という展開。

 大庭葉藏の「恥の多い生涯を送ってきました」という印象的なせりふや、「第一の手記」といったキーワードが登場し、登場人物の名前もそのままだが、原案をイメージしていると、その世界観、迫力のアクションシーンに驚かされる。

 SFではあるが、「無病長寿大国・日本」という世界観は、「こういう未来もあり得るのでは」とイメージしやすく、それゆえに恐怖を感じた。平均寿命120歳を祝うイベントは「人間合格式」と銘打たれている。「人間を“失格”する」「人間を“合格”する」という表現にはっとさせられた。

 生きる意味を見いだせず、自堕落な日々を送る大庭葉藏を宮野真守さん、ヒロイン・柊美子を花澤香菜さん、謎の男、堀木正雄を櫻井孝宏さんが演じ、絶望する葉藏、真っすぐにより良い未来を信じる美子、怪しさ満載の堀木を表現している。ほかに、福山潤さん、松田健一郎さん、小山力也さん、沢城みゆきさん、千菅春香さんらが声優として出演。

 テーマは「日本発の世界を魅了するSFダークヒーロー」。葉藏がいかにしてダークヒーローへと変貌を遂げるのか。後半の息もつかせぬ怒涛(どとう)の展開には圧倒された。(岡本温子/MANTAN)

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