今年、創刊50周年のマンガ誌「ビッグコミック」(小学館)の関係者に、名作の生まれた裏側や同誌について聞く連載企画「ビッグに聞く」。第16回は、「ポーの一族」「11人いる!」「トーマの心臓」などで知られ、“少女マンガの神様”とも呼ばれる萩尾望都さんが登場。「ビッグコミック」の人気作「ゴルゴ13」への思いやインスピレーションの源などについて聞いた。
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「ビッグコミック」が創刊された1968年当時、萩尾さんは福岡県大牟田市に住む19歳のデザイン専門学校生で、翌年にマンガ家になる。当時を「『ビッグコミック』は『COM』と共に、マンガ好きの女の人も手に取っていました。私は、前からさいとう・たかを先生の絵柄が好きでした。創刊からしばらくして始まった『ゴルゴ13』の衝撃が大きかった」と振り返る。
「ゴルゴ13」は萩尾さんにとって特別な作品だ。「第1話が面白くってね、出だしは3コマ続いて、パンツ1枚で窓辺に立っている。ゴルゴは、初期は表情が豊かなんですよ。窓から他人のベッドを見てニヤッと笑うなど、可愛いところがあるんですけれど、どんどん『何もかも見慣れた』って感じの辛辣(しんらつ)な顔になっていくんです。当時の女性マンガ家はよくパロディーを描いたものです。自分のマンガに出てくる狙撃者の顔をゴルゴにしたりね。あの眉毛を描きたくなるんですよ(笑い)」と話す。
「ビッグコミック」の創刊から50年がたち、マンガは変化してきた。ただ、萩尾さんは「ビッグコミック」で描かれている女性の印象が「そんなに変わっていない」と感じているという。「マンガってものは、時代を先取りする部分もあるんですけど、『ビッグコミック』は安定多数の男性を顧客としているせいか、女性観は50年でそんなに変わらない。例えば、手塚治虫先生はフェミニンな作家で、未来志向のマンガをずっと描かれていても、女性観は一貫して旧式です。男性、中性、女性の三つをきっちりと分けて描いていらっしゃるのが特徴で、性転換する話が自然と出てきます。それを男性読者が楽しんで読んでいるのが私には興味深かった」と語る。
一方で、少女マンガの変化については「私が子供の頃は母子ものが多かった。その後、恋愛という要素が大きくなった。男の子を好きになって、どうすればいいのか?という作戦の話になってきました。今もそれが続いている。作戦の内容、男の子との関係が流行、時代によって変わっている」と分析する。
萩尾さんは“少女マンガの神様”とも呼ばれ、SF、ファンタジー、ミステリーなどさまざまな作品を世に送り出してきた。「インスプレーションの源は?」と聞いてみると「インスピレーションは夢、妄想の一種。起きていて見る夢のようなもの。どこから来るのか自分でも分からない。好きな言葉について考えていても、思い浮かんだりするんです」と明かす。萩尾さんはベテランではあるが、「ポーの一族 ユニコーン」「王妃マルゴ」を連載中で、まだまだ現役だ。今後も夢、妄想、言葉などから名作が生まれてくるのだろう。
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