有村架純:いま明かす朝ドラヒロインの重圧と覚悟「泣く夜もあった」

NHK連続テレビ小説「ひよっこ」でヒロインの谷田部みね子を演じてきた有村架純さん (C)NHK
1 / 14
NHK連続テレビ小説「ひよっこ」でヒロインの谷田部みね子を演じてきた有村架純さん (C)NHK

 NHK連続テレビ小説(朝ドラ)「ひよっこ」で、ヒロインの谷田部みね子を演じてきた有村架純さん。ドラマは今月4日にクランクアップを迎えたが、4月の放送開始からしばらくの間は、作品の評判に比べて視聴率が思ったように伸びず、数字の上では苦戦が続いた。当初は「家に帰ってからあふれる思い、込み上げてくるものがあって、泣く夜もありました」と重圧に耐えながらの撮影だったという有村さんに、放送も残りわずかとなったいまだからこそ明かせる思いなどを語ってもらった。

ウナギノボリ

 ◇食欲不振に体調不良…それでも「止めることは絶対にしたくなかった」

 「ひよっこ」は96作目の朝ドラで、「ちゅらさん」などの脚本家・岡田惠和さんのオリジナル作。奥茨城の農家に生まれて、のんびりした少女に育った谷田部みね子(有村さん)が、出稼ぎで東京に行っていた父が行方不明になったことをきっかけに、集団就職で上京。高度経済成長期を背景に、さまざまな事情を抱えた人たちとの出会い、関わりによって、“普通の女の子”であるみね子が、いつしか殻を破って成長していく姿が描かれてきた。

 有村さんが朝ドラに出演するのは2013年前期の「あまちゃん」以来、4年ぶり2度目。前回とは大きく異なり、今回はヒロインという重責を担う立場で、当初は「余裕もなかったですし、不安定になる部分もあった」という。

 みね子の心優しいキャラクターや有村さんの好演も相まって、作品の評判自体は4月の放送開始から上々。一方で思ったように伸びない数字(視聴率)は、目に見えないプレッシャーとなって有村さんを襲った。「最初のころ視聴率を気にしていないようで、気になっていたからか、食欲もなかったし、体調を崩していた時期もあって、よっぽど考えてしまっているのかなって……。その間は自分との戦いで、家に帰ってからあふれる思い、込み上げてくるものがあって、泣く夜もありました」と振り返る。

 それでも有村さんは「現場を止めるってことは絶対にしたくなかった」といい、「時間がなくとも、とにかくせりふは入れて、体調は悪くても絶対に止めないぞって。筋トレしたり、撮影の合間に体を動かして、汗を流して、たまにご褒美におすしを食べに行ったりしていました」とほほ笑む。また周囲の支えが大きな力になったといい、「友達や家族に励ましてもらったり、マネジャーさんに弱音をぽろっとこぼしたときは『やるしかない』ってポジティブな言葉をもらって。『自分たちは絶対にいいものを撮っている』って自信が皆さんにあって、現場が落ち込むような空気になったりはしなかったから、その空気に励まされていました」としみじみと思い返す。

 ◇岡田脚本を中心にみんなで一丸 共演者の言葉に背中を押され…

 そんな有村さんだが、作品やキャスト、スタッフへの信頼は一度も揺らぐことはなかったといい、「放送に入る前、第1週の台本をいただいたときから、現場の士気はとても上がっていた」と明かす。「『やっぱり岡田さんはすごい!』って空気が流れていて、ネガティブな雰囲気って終わるまで一切なくて、キャスト、スタッフみんなが同じ気持ちだったというのが一番大きいと思う」と力を込める。

 決して現場が「ネガティブにならなかった理由」を聞くと、有村さんは「一人一人のキャラクターが伸び伸びと生きている作品が目の前にあるっていうのが一番大きい。岡田さんが書く脚本が『素晴らしかった』という一言に尽きる」ときっぱり。「岡田さんって本当に一人一人のキャラクターを大事にするんです。このキャラクターはいいやっていうのが一切ない。見ていてもすごく感じるし、役者としては、それがものすごくうれしくて」と笑顔を浮かべる。

 それぞれが個性的なキャラクターを演じた共演者については「とにかく感想を言ってくれるんですよ、皆さん。リアルタイムで視聴者の方々と一緒になって見ている方が多くて。『今日の朝のみね子は良かったね』とか『あそこが面白かった』とか、感想を言ってくださって、背中を押してくださる方が多かった」と感謝する。「(すずふり亭のオーナー鈴子役の)宮本(信子さん)さんは必ず『大丈夫、疲れてない? 疲れているよね。寝られている? 良かった、良かった』って心配してくれて。視聴率がちょっといいと、『良かった、良かった』って背中をポンポンしながら言ってくださる。その力強い言葉がうれしくて。鈴子さんがみね子を支えているように、私も宮本さんに支えられて、すごくすてきな日々でしたね」と感慨深げだった。

 ◇耐え抜いてついに“最強レベル”に? どんなことも「受け止めたい」

 岡田脚本を“道しるべ”に、昨年11月のクランクインから10カ月近く、“二人三脚”で共に歩んできたみね子という役について、有村さんは「いまはいとおしい存在。こんなに長くやっていると愛着も湧くし、大切な守りたい存在。こんなにも長い期間、同じ役をやることってあまりないと思うので、みね子を超す役が出てくるのかっていうくらい、自分の中ではいとおしい存在になりました」と思いの深さを明かす。

 劇中のみね子のように、撮影期間の約10カ月は有村さんを大きく成長させたようで、「まあ『何かに耐える』っていうのは任せてください」とちょっぴり余裕の笑みを見せる。脚本の岡田さんも、成長した有村さんのことを「最強レベルにいるのではないか」と認めていたが、「これ以上に何かぐっと耐えることがあるとしたら、次に何があるんだろうって思うんですけれど。とにかく、それくらい受け止められる気持ちはついたかなって思いますし、どんなことも『受け止めたいな』って」と力強く語る。

 さらに有村さんは「お芝居のうまい、へたっていうのはあまり気にせず、これからも自分の中で大事にしたいのは、本当に気持ちって作品に表れるんだなっていうこと。これからも役に対して、作品に対して、キャストやスタッフさんに対して、どういう思いでいて、どのくらいの熱量でいられるのか、というのは、大事にしなくちゃいけないなって」と実感をこめていた。

 「ひよっこ」はNHK総合で月~土曜午前8時ほかで放送。全156回を予定。最終回は30日に放送される。

写真を見る全 14 枚

テレビ 最新記事