渡邊雄太選手:NBAでの6年間を振り返る 八村塁選手へのエール&富永啓生選手ら日本代表メンバーとの交流も

インタビューに答えた渡邊雄太選手=WOWOW提供
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インタビューに答えた渡邊雄太選手=WOWOW提供

 米プロバスケットボール「NBA」のメンフィス・グリズリーズ所属で、WOWOWのNBAアンバサダーを務める渡邊雄太選手が4月22日、WOWOWで放送・配信されたNBAの「プレーオフ西1回戦 マーベリックスVSクリッパーズ 第1戦」に生出演。WOWOWは放送後、NBAを6シーズン戦い抜き、来シーズンからは日本でプレーする渡邊選手にインタビューした。八村塁選手(ロサンゼルス・レイカーズ)への期待を含めたプレーオフの見どころ、6年間のNBAキャリア、富永啓生選手(ネブラスカ大)や河村勇輝選手(横浜ビー・コルセアーズ)ら日本代表メンバーとの交流について語った。

ウナギノボリ

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 ――WOWOWのNBA中継に初出演した感想をお願いします。

 楽しかったですし、今後機会があれば解説とかもやってみたいと思っているので、そういう機会があったらいいなと思っています。

 ――NBAは21日からプレーオフに突入しました。注目のチームを教えてください。

 自分が所属していたサンズは、やっぱり気になります。それからレイカーズやナゲッツも注目しています。特に、(レイカーズの八村)塁とは仲がいいので、彼がナゲッツ相手にどうプレーするのか気になります。東では、実際に戦い、プレーしているのを見ていると、ペイサーズは良いチームで面白いと感じました。そのペイサーズがバックス相手にどういうプレーをするかすごい楽しみです。西も東も、どこが勝っても不思議じゃないというか、それぐらい今シーズンは混戦だったと思っているので、下位シードが上位シードを倒す可能性は十分あり得ると思っています。どのチームが勝ち上がってもおかしくないです。

 ――注目する選手はいますか?

 ペイサーズのタイリース・ハリバートンは当然注目です。彼中心のオフェンスがペイサーズの強みです。ハリバートンの縦パスや、彼の展開からペイサーズのリズムが生まれていると思うので、そういうのもすごい楽しみです。あとは、やはり塁ですね。彼は日本代表でも一緒にプレーしていますし、彼がどのようにプレーするのか楽しみにしています。

 ――八村選手が所属するレイカーズとは10月と11月に対戦。実際に対戦してみていかがでしたか?

 去年のプレーオフからスリーポイントが格段にうまくなったと思います。もともとシュートが上手な選手ではありましたが、どちらかというとドライブからのレイアップやミドルレンジを得意としていた中で、今シーズンからスリーポイントもかなりの高確率で決めていて、ディフェンスする側としてすごくやりにくい感じでした。距離を詰めたら抜かれてしまいますし、もともとフィジカルがすごいので、体を当てながらドライブでフィニッシュまで持っていきますし、スペースを空けたらスリーポイントを決められるし、対戦相手にしたらすごく嫌な選手でしたね。

 ――プレーオフでは八村選手にどんなプレーを期待しますか?

 彼らしいプレーをしてほしいと思っています。去年のレイカーズのプレーオフでの快進撃は、塁がいたからというのは間違いないと思います。今シーズンは、いきなり優勝候補のナゲッツと対戦ですが、レイカーズはナゲッツ相手に勝てるチームだと思うので、塁が二コラ・ヨキッチなどをしっかりおさえて、レイカーズが勝っていく姿を見たいです。塁がレイカーズのキープレーヤーと言っても過言ではないと思います。

 ――ご自身もプレーオフを経験していますが、プレーオフを勝ち抜くために必要なことは何でしょうか?

 フィジカル的にもメンタル的にも、タフさが間違いなく必要になってくると思います。レギュラーシーズンと強度の違う中で、スケジュール的にはほとんど同じような感じで試合をこなしていくわけです。2カ月くらいの間、心身ともにタフになっていかなければいけないと思います。

 ――プレーオフが始まったばかりですが、ファイナルの予想をお願いします。

 東はセルティックスが強いです。西は希望を込めてサンズを推したいと思います。サンズは第6シードではありますが、実力的にはもっと上でも良かったと思っています。

 ――ご自身のNBA生活6シーズンの振り返りをお願いします。

 6シーズン本当に毎日バスケのことだけ考えて、自分がこの世界に残るために考えてやってこられたので、本当に充実した6年間だったと思っています。今改めて、終わってみるとあっという間の6年間でした。もちろんつらい思いもしましたが、その分、楽しい思いもさせてもらいました。いろいろいい経験をさせてもらえたので、自分にとっては一生忘れることのできない6年間です。

 ――2月にサンズから古巣のグリズリーズに移籍した際は、どのように受け止められましたか?

 今回は自分がトレードをされる立場でしたが、今まで僕も過去5年間でチームメートがトレードされるのを見てきました。そういう意味で、ビジネスの世界は割り切ってやるしかないと思っていました。ただ、やっぱりいざ自分が当事者になってみると、すごくショックな部分はありました。優勝を目指してやっていた分、本当かという気持ちがありましたが、(トレード先が)グリズリーズだったので本当に良かったです。最後は僕がNBAを始めた地でNBAのキャリアを終えるというところも、なるべくしてなったのかなと思います。

 ――グリズリーズ移籍が決まった時、ケビン・デュラント選手らサンズのチームメートから言葉をかけられましたか?

 選手のグループチャットがあるのですが、僕も含めたトレードされる選手に対して、これから別のチームでも頑張ってと皆に言ってもらいました。

 ――NBA6シーズンの中で、試合以外で印象に残っている出来事はありますか?

 プライベートはほとんど犠牲にした6年間だったので、プライベートで記憶に残っていることは全くありません。僕より能力や技術のある選手が、1、2年でNBAを去っていくのをずっと見てきたので、その犠牲があったからこそ、自分の能力で6年間やってこられたと思っています。もっとアメリカのことを知ることができたらと思いますが、それは自分が現役を引退した後でもできることなので、現役の間は仕事であるバスケットボールに全力投球することが自分らしいと思っています。本当にバスケのことだけを考えた6年間でした。

 ――NBA6シーズンにおける収穫と課題を教えてください。

 高校時代を振り返ってみても、もともとシューターではありませんでした。アメリカに行って、シュート力を身につけないとこの世界で生き残っていけないというところから、スリーポイント練習を一生懸命始めました。大学でもプロでも毎年ちょっとずつ結果が見えてきて、それが昨シーズンに本当に開花した感じでした。時間的にはかかりましたが、地道に努力すれば、世界最高峰のレベルでもちゃんと力を発揮できるということを知れたのは良かったです。ただ、技術的にもっといろいろなことができないと、NBAの世界でこれからさらに6年以上となってくると生き残っていけません。そういう意味では自分はまだまだ実力不足な部分があったのかなというふうに思っているので、これから日本に帰るにあたってさらに技術を身につけて、日本では「3&D」以外のプレーも見せていけたらと思っています。

 ――今夏にはパリ五輪が控えています。フランス、ドイツといった強豪と同組ですが、個人的な目標は?

 チームの目標はこの間、トム・ホーバスヘッドコーチがベスト8を目指すと発表したので、今の僕たちにとっては良い目標だと思っています。ドイツもフランスも強豪ではあるのですが、正直言って、五輪でどの国と対戦してもどの組に入っても変わらないです。ただ、開催国のフランスと対戦できるのはうれしいです。お客さんも満員になると思うので、完全アウェー状態の中で五輪を戦えるのはすごく楽しみにしています。

 ――日本代表が五輪で勝ち進むために一番大切なことは何だと思いますか?

 対戦相手を考えるより、まず自分たちが練習でやっていることを、いかに試合で出せるかが大事です。相手の方が強いのは分かっているので、玉砕覚悟で自分たちが得意とする速い展開からスリーポイントを打っていって、それを高確率でしっかり決めることができれば、どの国相手でもしっかり戦えるのではないかと思っているので、めちゃくちゃ楽しみです。

 ――日本代表でチームメートの富永啓生選手は、渡邊選手から見てどのような選手でしょうか?

 シュート力に関しては、すでにNBAの中でも上位クラスにいると思います。それぐらい彼のシュートはよく入ります。今シーズン、ネブラスカ大で彼の持っているものがより開花したと思っています。バスケットって結局いろいろ言われますけど、シュートが入る人はかなりチームから欲しがられます。そういった意味では、NBAでやっていけるものは持っていると思います。僕の時もそうでしたが、周囲からいろいろな意見が出てきます。僕は自分自身を信じてやってきた結果の6年なので、彼もあまり周りの声を気にせず頑張ってほしいです。日本に帰国するのを発表した後に彼とは連絡をとって、「お疲れ様でした」と言われましたけど、僕からは、まずNBAのベンチに入って僕の6年間なんて軽く超えてくれ、と伝えました。チームメートとしても、友人としても、そしてNBAで多少なりともやってきた先輩としても、彼のことをすごく応援しているので、僕はあまりいろいろ言わずに彼がやっていることを信じて黙って応援していこうと思います。

 ――SNSで、来季は日本でプレーすることを発表されました。その後に日本代表のメンバーから連絡がありましたか?

 何人かから連絡をもらいました。(富樫)勇樹とはそのずっと前に言っていたので、改めて連絡をもらいました。あと、河村(勇輝)からも連絡をもらいました。彼はすごく真面目と言うか、すごく良い性格をしていて、本当に良い子です。「自分なんかが雄太さんのことをすべて知っているかのように連絡するのはおこがましいかと思ったのですが」みたいな感じで始まったので、そんなこと気にせず、去年あれだけ一緒に頑張った仲なんだからという感じで返しました。それで、「NBAでの6年間すごかったです、お疲れ様でした」と言ってもらえてうれしかったですね。昨年に日本代表でプレーして、本当にすごく楽しかったので、またこの夏にあのメンバーたちと一緒にプレーできると考えたら、それだけで今からワクワクします。

 ――来季はBリーグでプレーすることになりますが、日本のファンにどういったプレーを見せたいですか?

 僕らしいプレーを見せていくのが一番だと思っています。あまりいろいろ考えずに、僕が今まで経験してきたことを、僕が今まで得てきたものをコートに出していきたいです。本当に楽しんでバスケットがやれたらと思っているので、お客さんが楽しんで、渡邊選手はいつも楽しそうにプレーしているね、みたいなことを言ってもらえるのが自分にとってはうれしくなると思っています。

 ――Bリーグに対する印象をお聞かせください。

 すごい魅力のあるリーグで、人気も実力も上がってきています。僕もその中に今後入っていって、携わっていきたいです。日本のバスケを盛り上げたいのは、僕を含めて多分みんなが思っていることなので、これからは日本でしっかりやっていきたいと思っています。

 ――日本での生活は11年ぶりになりますが、やりたいことや行ってみたいところはありますか?

 日本に帰ってきても、僕の生活リズムは変わんないだろうと思っているので、基本的には引退するまで、バスケ漬けの生活になると思っています。日本食は本当に大好きなので、日本食がいつでも食べられる環境があるのは、自分の中で一番大きいですね。

 「WOWOW NBA」の今後の放送・配信スケジュールは次の通り。4月26日午前10時55分「プレーオフ西1回戦 八村塁出場予定 ナゲッツVSレイカーズ 第3戦」(WOWOWライブ・WOWOWオンデマンドで放送・配信)▽4月27日午前11時半「プレーオフ西1回戦 ティンバーウルブズVSサンズ 第3戦」(WOWOWライブ・WOWOWオンデマンドで放送・配信)▽4月28日午前9時半「プレーオフ西1回戦 八村塁出場予定 ナゲッツVSレイカーズ 第4戦」(WOWOWオンデマンドで配信、WOWOWライブでは午後10時半から放送)▽4月29日午後10時25分「プレーオフ西1回戦 ティンバーウルブズVSサンズ 第4戦」(WOWOWライブ・WOWOWオンデマンドで放送・配信)

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