梶裕貴:「王様ランキング 勇気の宝箱」 自分を貫けるダイダを尊敬 勇気を振り絞った瞬間

「王様ランキング 勇気の宝箱」に出演する梶裕貴さん
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「王様ランキング 勇気の宝箱」に出演する梶裕貴さん

 マンガサイト「マンガハック」ほかで連載中の十日草輔(とおか・そうすけ)さんのマンガが原作のテレビアニメ「王様ランキング」の新作「王様ランキング 勇気の宝箱」が、4月13日からフジテレビの深夜アニメ枠「ノイタミナ」ほかで放送される。同作の主人公・ボッジの弟、ダイダを演じるのが声優の梶裕貴さんだ。前作では、ダイダは亡き父ボッスに体を乗っ取られ、梶さんはダイダと、中身がボッスであるダイダという二つのキャラクターを演じた。ダイダ役への思いと共に、梶さんの自身の“勇気”のエピソードを語ってもらった。

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 ◇やりがいが大きかったダイダ役 一人二役の挑戦も

 「王様ランキング」は、2017年に連載を開始したウェブマンガ。耳が聞こえない非力な王子・ボッジが、多くの人と出会い成長していく姿を描く。テレビアニメが2021年10月~2022年3月に放送された。放送文化の向上に貢献した番組や個人・団体を表彰する「ギャラクシー賞」(放送批評懇談会)テレビ部門の2022年3月度月間賞に選ばれたことも話題になった。「勇気の宝箱」は、前作では描かれなかったボッジやカゲ、仲間たちの知られざる“勇気の物語”が描かれる。

 梶さんが演じるダイダは、前作ではボッス王国の第一王子であるボッジの異母兄弟で、第二王子として登場。プライドの高さゆえにボッジにきつく当たるシーンも描かれた。ダイダが父ボッスに体を乗っ取られてしまうこともあり、梶さんは難役に挑むことになった。

 「オーディションを受けた段階では、まだ物語がどのように決着するのか分かっていないタイミングということもあって、オーディションの原稿にもダイダとしてのせりふしかなかったんです。でも、ふたを開けてみれば、7割ぐらいがボッスで(笑い)。そういった意味でも挑戦でしたね。実質二役を演じるようなものですが、ボッスの状態とはいえ体はダイダであるという難しさがありました。また、彼の本音の部分と、虚勢を張っている部分のギャップを自分の中でもちゃんと理解して、そのズレが気持ち悪く映らないように、一人の人間として愛してもらえるキャラクターとして作っていければなと考えていました。2クールかけて、彼を丁寧に演じきることができてよかったです。今はほっとしていますね」

 前作の中でも、梶さんは暗闇の中に閉じ込められたダイダが、母のヒリングを呼ぶシーンが印象に残っているという。

 「あの世界に閉じ込められ『母上』と叫び続け……長い間、繕ってきたものから少し離れて、ようやく本当の彼らしさが見えたというか。しっかりし過ぎているから忘れがちですけど、彼はまだまだ子供ですからね。やっぱり親の存在は大きいんです。同時に、ヒリングからの愛情を強く感じるシーンでもありました。それから、これは後から監督にうかがったお話なのですが、アフレコでのせりふを聴いて、その後、僕の芝居に合わせて画(え)を描き直してくださったらしくて。本当に光栄ですよね。役者冥利に尽きるうれしい報告でした。そんなありがたいお話も含めて印象深いですし、僕自身も、よりダイダに近づくことができたエモーショナルなシーンだったと感じています。ほかには、ボッスに体を支配されて、(ボッスの)過去について語るシーンも、自分の中ではかなりハードルが高かったです。ただ別役を演じるわけではなく、本役である三宅(健太)さんのボッスを、その芝居に感じさせなければならないわけですからね。緊張しました。バトルシーンがあったかと思えば、繊細な心理描写もある、非常にやりがいのある役でした」

 「勇気の宝箱」では、さまざまな出来事を経て成長したダイダが登場する。

 「今お話したように、前作では、本当の意味で“ダイダ”を演じている時間はあまり多くなくて(笑い)。基本“ボッス”状態だったので、本編の物語が終わった後のダイダはどういう感じなのだろう?と、今回のアフレコに際して少し悩みましたね。ダイダはきっと、もともと高いポテンシャルの持ち主。でも決してそれに甘んじることなく、見えないところでしっかり努力もしてきた人だと思うんです。肩書だけでなく、実力も伴っている人。なので物語序盤では、上品さに加え、王たる風格みたいなものを意識して演じていました。とはいえ、まだまだ子供なので、どうしても自分を大きく見せようと斜に構えてしまうようなところもあるんですけどね(笑い)。そこがまた可愛らしくもあって。その後、一度はボッスに精神を支配され、闇の世界に閉じ込められてしまうダイダでしたが、ボッスとミランジョの過去を知ったことや、ボッジへの尊敬と絆を取り戻したことから改心。さらにはボッジが旅に出たことで、再び王の座に返り咲くわけです。そんな経験を経ての今作ですので、一歩大人に近づいたダイダの成長加減には慎重になりました」

 ◇これからのダイダに「期待しかない」 梶裕貴の勇気の物語も

 挑戦となったダイダ役。梶さんはダイダを「憎めないやつ」と感じているという。

 「現実だとかアニメだとか関係なく、思春期を過ごす中で、きついことを相手に言ってしまったり、そういった感情のやりとりの中で悩んでしまったりすることは誰しもあると思います。でもダイダはそこで反省して、きちんと『ごめん』『ありがとう』が言える人なんですよね。本当に立派だと思います。前作の物語を経て大きく成長した彼にとっては、ある意味、長い人生ここからがスタート。どんな王様に、大人になっていくのかすごく楽しみですし、期待しかないですね。やっぱり僕は、ダイダのことがすごく好きです」

 さらに共感し、尊敬する部分もある。

 「プライドを持って、自分はこうあるべきだとか、そのためにはこうしなければいけないと、しっかりと考えて行動できているところ、そして、それを貫けるところ、本当にすてきですよね。共感というか……自分もそうありたいなと尊敬します」

 「勇気の宝箱」では、ダイダを含めさまざまなキャラクターの“勇気”の物語が描かれる。梶さん自身の勇気のエピソードを聞くと、今年2月に出演した「舞台『キングダム』」について語ってくれた。

 「初めて本格的な殺陣に挑戦しました。この歳で、まったくの未経験な表現にチャレンジすること自体、かなりの勇気が必要でしたね。周りは舞台経験やアクション経験が豊富な方ばかりだったので、そこに混ざって初めてというのも、すごく不安でした。しかも、声優としてはある程度のキャリアを重ねてきているわけで、当然恥ずかしい芝居はできないですし、決して安くはないチケットを購入して来てくださるお客様に、生半可なものは提供できませんから。できる人たちの中で、できない自分がどこまで食らいついていくか。肉体的にも精神的にも、かなり追い詰められた1カ月間でした。また、殺陣とはいえ、油断すれば大ケガをしてしまう危険もあるわけで、リアルに『戦う』という意味での勇気も必要でした。比喩表現ではなく、本当にギリギリの毎日でしたが(笑い)、無事に千秋楽まで終えることができてよかったです。勇気を持って挑戦してこそ得られるものはあるのだなと、この歳になっても感じることができたのは、すごくありがたい経験でした」

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