毎クール話題を集める新作アニメだが、特に10月から放送される“秋アニメ”のラインアップが注目作ぞろいで話題を呼んでいる。アニメコラムニストの小新井涼さんが独自の視点で分析する。
ウナギノボリ
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近年、ほぼ毎クール50本前後もの新作アニメがリリースされているのもあり、そのどのクールでも、注目作がいくつか重なることはままあることです。しかし、来月からの秋クールが、それにしても近年まれにみるほど話題作目白押しの、とんでもないラインアップとなっているのをご存じでしょうか。ただでさえ本数が多く、何を見ようか迷う人も多い新作アニメですが、秋クールはどんな作品があって、どれが注目を集めているのでしょうか。
まず、今回の秋アニメには、既に3作以上シリーズが制作され続けている堅実な人気を誇る作品が、「ここまで一気に!?」というほど勢ぞろいしているのが特徴です。原作マンガ完結後もたびたび関連ワードがSNSのトレンドをにぎわせる「ゴールデンカムイ」第4期をはじめ、「弱虫ペダル LIMIT BREAK」も、4年ぶりファン待望の新作テレビシリーズとなります。
先日公開された衝撃のPROLOGUEが早くも話題の「機動戦士ガンダム 水星の魔女」も、長寿シリーズながら直近では特に「閃光のハサウェイ」でもみられたように、いまだ新たなファン層をも獲得し続ける「ガンダム」シリーズ最新作だけあり、その反響は見逃せません。「ジョジョの奇妙な冒険 ストーンオーシャン(配信リリース済み)」や「僕のヒーローアカデミア」6期、「モブサイコ100 III」などは、日本での人気はもちろん、SNSからは海外ファンからの期待値の高さも窺(うかが)えます。
加えて元より高い知名度を持つ“往年の人気作のリブート”も目白押しです。「BLEACH 千年血戦篇」や「令和のデ・ジ・キャラット」をはじめ、36年ぶりに新作テレビシリーズが放送される「うる星やつら」は、今年年明けにアニメ化が発表されて以降も、徐々に明かされる新キャストの発表などが度々話題となり、その注目度の高さが窺えます。
他にも、「ポプテピピック TVアニメーション作品第二シリーズ」や、「PUI PUI モルカー DRIVING SCHOOL」など、1期放送時に予想外の反響を呼んだ作品も新作が放送されます。こうしてみるだけでも秋アニメは話題作大渋滞のクールと言えるでしょう。
そしてその極めつきが、それら話題作の筆頭ともいえる2作品で、既に世界中から高い期待と注目を集めている「チェンソーマン」と、1クール目の盛り上がりも冷めやらぬ「SPY×FAMILY」第2クールの放送が大バッティングしていることです。正直どちらも、盛り上がり方によってはアニメファン以外まで巻き込み、そのクールで最も話題になりそうな注目作であるため、ただでさえ話題作が多く視聴作品の取捨選択が行われる中、両作がどう盛り上がっていくのかには、放送前から注目が集まります。
特に、放送を目前にして元より高かった期待値がさらに上がってきている「チェンソーマン」は、そのコアな作風に対して、作品人気がどの視聴層にまで広がっていくのかにも要注目です。
当初は、子供から大人まで幅広い視聴層を持つ「SPY×FAMILY」と比較して、ショッキングな描写も多い「チェンソーマン」は、ややコアな視聴層に限られそうなイメージが個人的にはありました。しかし、名だたるアーティストたちによる異例の主題歌体制や、「これを12話テレビシリーズで?」と震撼(しんかん)してしまう本予告の映像美からは、そんな予測を覆し、視聴者を選びそうな作風うんぬんの垣根を越えて、幅広い人々の間で話題になりそうなポテンシャルも感じます。配信サービスもすっかり定着した現在では、多少過激でも、話題の作品が家族で視聴されることも珍しくはないため、意外な層にまで人気が広がる確率も、ゼロではないのかもしれません。
「鬼滅の刃」や「呪術廻戦」など、10年ほど前ならもっと視聴層が限られていたであろういわゆる“深夜アニメ”が、アニメ・マンガファン以外にまで広く浸透してきた現在。ではそうして増加した新たな視聴層には“尖(とが)った”作品も届くのでしょうか。その点からも、多くの名だたる話題作の中、「チェンソーマン」の反響がどう広がっていくのかは、秋アニメにおけるひとつの大きな注目ポイントとなっていきそうです。
こあらい・りょう=埼玉県生まれ、明治大学情報コミュニケーション学部卒。明治大学大学院情報コミュニケーション研究科で、修士論文「ネットワークとしての〈アニメ〉」で修士学位を取得。ニコニコ生放送「岩崎夏海のハックルテレビ」などに出演する傍ら、毎週約100本(再放送含む)の全アニメを視聴して、全番組の感想をブログに掲載する活動を約5年前から継続中。「埼玉県アニメの聖地化プロジェクト会議」のアドバイザーなども務めており、現在は北海道大学大学院国際広報メディア・観光学院博士課程に在籍し、学術的な観点からアニメについて考察、研究している。
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