AnimeJapan:3年ぶりのリアル開催 コロナ禍経ての変化とは

リアル、オンライン、双方の“いいとこ取り”なハイブリッド開催であったように思います
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リアル、オンライン、双方の“いいとこ取り”なハイブリッド開催であったように思います

 先日開催された世界最大級のアニメイベント「AnimeJapan(アニメジャパン)」。コロナ禍の影響で、3年ぶりのリアル開催となった。オンライン開催との併催という新しい形態をとったアニメジャパンの展望を、アニメコラムニストの小新井涼さんが独自の視点で分析する。

ウナギノボリ

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 先週末に開催された世界最大級のアニメイベント「AnimeJapan(アニメジャパン)」。新型コロナウィルスの影響で、ここ2年は開催中止やオンライン開催が続いていましたが、今年は約3年ぶりにリアル会場である東京ビッグサイトでの開催が復活し、リアルとオンラインでの併催となりました。コロナ禍以降初の現地開催が復活した今回、会場や参加者の様子はどのようなものだったのでしょうか。コロナ禍以前や昨年のオンライン開催とも比較しつつ、当日の様子を紹介します。

 約3年ぶりの復活となったリアル会場の様子は、やはり人であふれかえっていたコロナ禍前と完全に同じとはいかず、感染症対策のため十分な間隔が取られて安心である一方、仕方ないことではありますが、人通りもまばらに見え少し寂しいものとなっていました。しかし会場内のアクティビティーに関しては、シンプルな展示やグッズ販売のみに縮小してしまうかと思いきや、ノベルティーの配布や体験型の展示、出典ブースでのミニステージなど充実していて、予想以上にいつものAnimeJapanの景色が広がっていたのです。

 確かに、配布物を受け取る際は必ず消毒をしたり、密を避けるための立ち入り制限もあってか、例年より人通りが少ないにもかかわらずブース展示が数十分待ちになるといった、コロナ禍以前にはあまり見られなかった光景も多々見られました。

 しかし、単なる鑑賞にとどまらず遊んで体験できる展示や、知らない作品との偶然の出会いといったこれまでのリアル会場ならではの楽しみは、感染症対策が行われた上でもしっかりと健在だったのです。

 また、もう一方のオンライン開催ですが、こちらもリアル会場が復活したからといって、昨年より縮小したおまけ的な併催であったのかというと、そうではありません。それどころか、チケット抽選制のステージ・AJステージの配信に加え、各出展独自のステージイベントはYouTubeなどでの無料配信もあり、オンラインでも昨年と同等の内容がしっかりと楽しめるようになっていました。実際に、参加人数が確認できる配信では、多くて数千人規模の人が世界中から同時接続していたりと、まだまだ遠方からの参戦が難しい中、リアル会場のみでの開催時以上に、多くの人にイベントの様子が届いていたことがうかがえます。

 また今回特徴的だったのは、(ファストチケットを除き)入場券を購入すれば、リアル会場への入場に加え、同日に行われるAJステージが、配信でも視聴できたことです。そのため、抽選に外れても会場で配信を通してステージをリアルタイムで楽しんだり、会場で展示だけ見て、家に帰った後にステージのアーカイブ配信を視聴したり、家からステージの配信だけを視聴する等、参加方法の自由度もかなり高くなっていました。

 結果的に、遠方の人だけでなく、都合が悪くリアルタイムで参加できなかった人から当日までAnimeJapanの開催を忘れていたなんて人まで、これまでだったら参加できていなかった人たちのイベントへの参加機会も、数多く生まれていたのではないかと思います。

 今回、3年ぶりのリアル会場での開催が復活したものの、コロナ禍以前と完全に同じAnimeJapanではありませんでした。しかしそれは決して悪い意味ではなく、むしろリアル会場だけで開催していたころのさまざまなアクティビティーに加えて、昨年オンライン開催で培われた自由度の高い参加方法までを備えた、双方の“いいとこ取り”なハイブリッド開催であったように思います。

 そんな今年のAnimeJapanは、リアル会場が復活し、単純にコロナ禍以前のものに“戻る”のではなく、コロナ禍を経て“進化”し、これまでにない新しい姿を見せたものであったといえるでしょう。

 ◇プロフィル

 こあらい・りょう=埼玉県生まれ、明治大学情報コミュニケーション学部卒。明治大学大学院情報コミュニケーション研究科で、修士論文「ネットワークとしての〈アニメ〉」で修士学位を取得。ニコニコ生放送「岩崎夏海のハックルテレビ」などに出演する傍ら、毎週約100本(再放送含む)の全アニメを視聴して、全番組の感想をブログに掲載する活動を約5年前から継続中。「埼玉県アニメの聖地化プロジェクト会議」のアドバイザーなども務めており、現在は北海道大学大学院国際広報メディア・観光学院博士課程に在籍し、学術的な観点からアニメについて考察、研究している。

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