鈴木央(なかば)さんの人気マンガが原作のアニメ「七つの大罪」の新作劇場版「劇場版七つの大罪 光に呪われし者たち」(浜名孝行監督)が7月2日に公開される。雨宮天さんは、2014年10月からスタートしたテレビアニメ第1期から、約7年にわたってヒロイン・エリザベスを演じてきた。雨宮さんにとってエリザベスは、新人の頃から演じてきたキャラクターで「乗り越えないといけない壁」がたくさんあり、エリザベスと出会ってからの約7年で、声優として成長できたことも実感しているという。雨宮さんに「七つの大罪」、エリザベスへの思い、声優としての活動について聞いた。
ウナギノボリ
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「七つの大罪」は、「週刊少年マガジン」(講談社)で2012~20年に連載。かつて王国転覆を謀ったとされる伝説の逆賊・七つの大罪の戦いが描かれた。テレビアニメは第1期が2014年10月~2015年3月、「聖戦の予兆」が2016年8~9月、「戒めの復活」が2018年1~6月、「神々の逆鱗」が2019年10月~2020年3月に放送。2021年1~6月には最終章「七つの大罪 憤怒の審判」が放送された。2018年8月には初の劇場版「天空の囚われ人」も公開。新作劇場版は、原作者の鈴木さん描き下ろしの完全新作ストーリーで、テレビアニメ最終章「七つの大罪 憤怒の審判」の“その先”が描かれる。
雨宮さんは2012年に声優デビュー。「東京喰種 トーキョーグール」「一週間フレンズ。」「この素晴らしい世界に祝福を!」など数々のアニメに出演してきた人気声優だ。「七つの大罪」は新人の頃から出演してきた作品ということもあり、特別な思いがある。
「デビュー間もない新人の時から長く演じさせていただいている作品。一番長く関わらせていただいているかもしれません。だから、そばにあることが普通になっているんです。『七つの大罪』は新しいことを常に教え続けてくれた作品でもあります。たくさんの経験と出会いをいただけました」
雨宮さんが演じるエリザベスは、リオネス王国の第三王女であり、移動酒場<豚の帽子>亭のウエートレス。正体は最高神の娘・女神族エリザベスの生まれ変わりで、泣き虫だが、強い信念と慈愛に満ちた心を持つ。雨宮さんはそんなエリザベスについて「絶対に友達になれないと思う」と言い切る。
「性格も考え方も私とは違いすぎて……。台本を読んで共感できないことも結構ありました。共感できなくても理解したい。エリザベスは、どういう人なのかを掘り下げていく中で、自分からは出てこない愛情、包容力を教えてもらいました。私にとっては親友ではないけど、パートナーのような存在ですね」
エリザベスを演じる中で乗り越えないといけない壁もたくさんあった。
「ちゃんと演じられているのか?と分からなくなり、つらい時もありました。自分よりもうまく演じられる方がいるかもしれない……と不安になったこともあります。もっと母性、包容力を……というディレクションをいただくことがあり、自分なりに考えて、何度も挑戦させていただき、そのたびに悩んで、研究してきました。壁を乗り越えられたのかは分からないのですが、(メリオダス役の)梶(裕貴)さんや共演者の方々、ファンの方から言葉をいただく中で、できるようになったのかな?とフワッとは感じるようにはなりました。できる限りのことをやっていますが、いまだに演じきれているかは分かりません」
この約7年で声優として成長してきた雨宮さん。デビュー当時は自信がなかったというが、徐々に変化していった。
「変化できていたらいいんですけど……。つい最近感じる変化として、自信を持って自分のことを声優と言えるようになりました。声優への憧れがすごく強くて、自分の未熟さも知っているので、こんな自分が声優と名乗っていいのだろうか?という思いがずっとあったんです。できる限りのことはしていますが、自信を持って自分を『声優です!』と自己紹介ができなかった。この2、3年で声優と名乗ることに抵抗がなくなってきました」
変化のきっかけは、共演者の言葉だった。
「以前は、声優同士で演技論の話になった時、自分はキャラクター、作品への理解が浅く、劣等感を感じたこともありました。ただ、コミュニケーション力が徐々に付いてきて、皆さんとお話できるようになった中で、尊敬している方に認めていただいたり、いろいろな言葉をいただいて、私なりにできているのかな?と感じさせていただく機会が増えたんです。自分を肯定できるようになったんです」
雨宮さんにとってコミュニケーション力は課題だったというが、徐々に克服していった。
「やっと人と話せるようになりました(笑い)。人との距離感が分からなかったんですね。楽しそうに話しているところに、どうやって会話に入っていいのか分からないから、台本を見て黙っている……ということもありました。お酒が好きなので、せめて飲み会には参加しようとしたりする中で、段々と人って怖くないんだな……と思えるようになっていったんです。お話をしていただいたら、会話を続けられるように、自分でも必ず質問を返すという課題を意識して、人と話せるようになりました!」
そんな雨宮さんが声優として大切にしているのは「キャラクターを自分のものにしないこと」だ。
「例えば、ギャグシーンがあって、いろいろな演技が思い浮かび、自分はこういうふうに演じたい!と思っても、キャラのことを一番に考えるようにしています。自己満足にならないようにちゃんとしたいんです。ディレクションをいただいた時も、私が考えているキャラクターが100%ではないですし、みんなで作品を作っていくものなので、先入観、固定観念をなくして、やってみよう!と挑んでいます」
「七つの大罪」の原作は、2020年3月に約8年の連載に幕を下ろし、アニメは新作劇場版でついに完結する。雨宮さんは、完結について「あんまり実感がないですね」と話す。
「また、何かあるんじゃないかな?という気持ちがあるんです。アニメで原作の最後まで描かれることがうれしいことですし、エリザベスをずっと演じさせていただけることはうれしいんですけど、実感がなくて……。劇場版の収録が終わった時、寂しいとは思ったのですが、まだまだ続いてほしいという気持ちもあって」
劇場版は「見どころがいっぱい」というが、中でも「メリオダスと二人きりになるシーン」が印象に残っているという。
「メリオダスとエリザベスの距離感が、これまでと違い、幸せ感があり、充実しているシーンです。解き放たれて、これまでとは違う恋人のような雰囲気を意識しました。これまで、壁にぶつかりながらエリザベスを演じてきましたが、梶さんに『今のせりふ、すごくよかったよ』と言っていただけたんです。メリオダス、エリザベスの距離感、愛情が伝わってきて、すごく大事なシーンになりました。バルトラさんとのシーンも大切です。血はつながっていないけど、エリザベスにとってバルトラさんは本当の父のような存在です。その思いを大切にしました」
「七つの大罪」の魅力を「根底にあるのは愛。そこがすてきです。それぞれのキャラクターに愛があるんです」と語る雨宮さん。「劇場版でしか描かれていないキャラクターの表情もあります。老若男女に見ていただきたいです。絶対に見てください!」と力を込める。劇場版は「七つの大罪」、エリザベスへの“愛”を込めた雨宮さんの熱演も大きな見どころになりそうだ。
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