俳優の長谷川博己さん主演のNHK大河ドラマ「麒麟(きりん)がくる」(総合、日曜午後8時ほか)で、本木雅弘さん扮(ふん)する斎藤道三の嫡男・高政(義龍)を演じてきた伊藤英明さん。5月10日放送の第17回「長良川の対決」では、道三が高政と争い命を落とした「長良川の戦い」が描かれるといい、物語は前半戦のクライマックスを迎えようとしている。「人に翻弄(ほんろう)され時代に翻弄されている中で、高政がどのように長良川の戦いに向かうのか、どうやってあの偉大なる父・道三と戦い、どのように終えんに向かっていくか、楽しみに見ていただきたいです」と視聴者にメッセージを送る伊藤さんに話を聞いた。
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伊藤さん演じる高政は1月19日放送の第1回「光秀、西へ」から登場。自らの出自の謎にこだわるあまり、父・道三との折り合いは悪く、ことあるごとに意見が食い違ってきた。
岐阜県出身の伊藤さん自身は元々「道三ファン」。“父親殺し”の高政のことはあまり好きではなかったというが、高政の人生を演じることで、その印象は「180度変わったと言ってもいいかもしれません」と明かし、「高政は自分の出自に疑問を抱き、ジレンマと葛藤でものすごく気持ちが揺れ動きますが、道三からの愛情が真っすぐにほしかったのではないでしょうか。偉大すぎる父を持ち、そして世の中に、時代に翻弄されたんだと思います」と役に寄り添ってみせる。
そんな高政の道三への憎悪は、4月19日放送の第14回「聖徳寺の会見」における、母・深芳野(南果歩さん)の死によって決定的となる。伊藤さんによると、高政は「あの時代には珍しくマザコン」で、母・深芳野は「唯一のよりどころ」だったという。
「道三と深芳野が仲良くしているのを目の前で見せられますが、母親が高政に家督をしっかり継承してもらう目的のためにやっている、ということが理解できなかった。母親の愛が分からないし、母親がどういう思いでそうしているのかが分からず、母親まで道三の元に行かれたら、本当に一人になってしまうという孤独感があったのではないかと思います。母親への愛が悲しみではなく憎しみに変わり、それが復讐(ふくしゅう)に変わる、『スター・ウォーズ』みたいですね」と伊藤さんは語っている。
4月26日放送の第15回「道三、わが父に非(あら)ず」で高政は、道三から家督を譲られ、美濃の守護代の座を得るも、道三が可愛がっていた腹違いの弟・孫四郎(長谷川純さん)と喜平次(犬飼直紀さん)を暗殺してしまう。この高政の蛮行に道三は怒り狂い、5月3日放送の「大きな国」で高政を討つため、出陣を決める。引き返せない父子の戦いを前に、伊藤さんには道三役の本木さんとの共演についても聞いた。
「(本木さんは)すごいです! 全てにおいて完璧です。所作、たたずまい、声の出し方、カメラの方向とか、まばたき一つ、呼吸一つ、ものすごく高いレベルで闘っていらっしゃるので、撮影中はものすごく緊張感がありますが、カットがかかった瞬間、ふっと(表情が)柔らかくなるし、本木さんは道三そのものでしたね。これが俳優なんだ、これが役者なんだなと思って、ほれぼれしました」と興奮気味に話す伊藤さん。
さらに「本木さんが演じる道三は、すごくすてきな道三でした。それを僕は目の前で一番良い席で見させていただきました」とうれしそうに話すと。「役同様に、この偉大な父親を超えられないと感じました。本木さんとの出会いが僕は一番大きかったですね。本木さんとの出会いがこれからの自分の役者人生においてものすごく大きなものになりました。道三とのシーンは全部好きですね。素晴らしい役者さんが斎藤道三を演じてくださり、岐阜の人間にとっては誇りです」と思いを明かした。
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