国内最大のゲーム展示会「東京ゲームショウ2018」(主催・コンピュータエンターテインメント協会)が20日、千葉市美浜区の幕張メッセで開幕した。近年人気のスマホゲームは、今回も出展タイトルの約3割を占めており、完全に定着したといえるだろう。一方で、ソニー・インタラクティブエンタテインメント(SIE)の携帯ゲーム機「PSVita」の2019年での出荷終了が報じられた。結果的にスマホに追いやられる形でついに携帯ゲーム機の一角がなくなるという決定的な局面を迎えたといえる。
ウナギノボリ
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コナミデジタルエンタテインメントの人気野球ゲーム「実況パワフルプロ野球」シリーズのタイトルで、無料でダウンロードできるゲーム「実況パワフルプロ野球 チャンピオンシップ2018」が配信中だ。全12チームが最新データで対戦でき、繰り返し遊べてしまうような内容だ。同社のサッカーゲーム「ウイニングイレブン 2018 Lite」も自分だけのクラブ作りを楽しめるモードを搭載し、基本無料のスマホゲームと同じ感覚で遊べてしまう。コナミは、ガラケー時代に基本無料でアイテム課金制のソーシャルゲームでヒットを飛ばしており、その後も自社の人気タイトルを次々とスマホに投入。一方でスマホのノウハウを生かしたゲーム機向けのソフトも出している。
その動きは他社も同様だ。コーエーテクモゲームスの格闘ゲーム「DEAD OR ALIVE 5 Last Round」で配信した「基本無料版」は、使えるキャラクターなどに制限はあるが、ダウンロード数が1000万を突破。セガゲームスの「BORDER BREAK」や「ファンタシースターオンライン2」、バンダイナムコエンターテインメントの「機動戦士ガンダム バトルオペレーション2」など、PS4でもスマホゲームのような基本無料、アイテム課金制のゲームがすらりと並ぶ。
共通するのは、繰り返し遊べるゲーム性の高さで、さわりしか遊べない体験版とは決定的に違う。各社とも「売り上げではない。まずコンテンツに触れるきっかけになれば良い」と明かす。遊んでもらった後のアプローチは多彩だが「無料で面白いコンテンツを出し、まずは1人でも多くのユーザーに触ってもらう」という流れが家庭用ゲーム機でも定着しつつある。
一方で、スマホゲームのリッチ化が進む中で、直接的な影響を受けたのが携帯ゲーム機だ。ゲーム機を販売するプラットフォーマーでもある任天堂やSIEも、既に“ライバル”でもあるスマホ向けにゲームを配信しているが、この流れも5、6年前ならありえないことだった。裏返せば、それだけスマホゲームの影響力が強くなった証拠でもある。
そしてスマホゲームの成長と反比例するように、11年に発売されたSIEの携帯ゲーム機「PSVita」が、ついに19年に出荷を終了。今のところ後継機の予定もなく、同社の携帯ゲーム機の歴史が断絶することになる。代わりにグループ会社のフォワードワークスが、PSプラットフォームの看板タイトルだった「アークザラッド」や「みんなのゴルフ」のスマホゲームを展開するのは時代の変化の象徴といえそうだ。
PSVitaと同じ11年に発売された任天堂の携帯ゲーム機「ニンテンドー3DS」も危機という意味では変わらない。ゲームショウでの事前出展数はわずかに5タイトル。据え置きでも携帯しても遊べる「ニンテンドースイッチ」のタイトル数は140以上で、以前の勢いはないのは明らか。仮に後継機が出るとしても「ニンテンドースイッチとの住み分けがはっきりしない」という業界関係者の指摘は多いが、当のニンテンドースイッチもサイズが大きく、3DSのように移動中プレーするのはちょっと微妙だ。その任天堂も、DeNAと資本業務提携して実際に「どうぶつの森 ポケットキャンプ」「ファイアーエムブレム ヒーローズ」などのスマホゲームを配信している。
実は「携帯電話が高機能になっていくと、携帯型のゲーム専用機は取って代わられるだろう」という予測は、2000年代に入ったころから、多くの大手ゲーム会社の経営陣が予測して話題になっていた。当時荒唐無稽(むけい)にも思えたその言葉が、予想以上にゆっくりと、20年近くかけて現実になっただけともいえる。
スマホゲーム隆盛の陰で役割を終えたように見える携帯ゲーム機だが、人気のニンテンドースイッチはかろうじて携帯ゲーム機の要素を残している。1990年代に売れなくなった任天堂の携帯ゲーム機「ゲームボーイ」が、データ通信機能を活用した「ポケットモンスター」の登場で息を吹き返した例もある。たった一つのコンテンツで、状況が劇的に変化するのがゲーム業界の怖さであり面白さ。そうしたサプライズはあるのだろうか。
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