劇場版アニメ「時をかける少女」(2006年)や「バケモノの子」(15年)などで知られる細田守監督の劇場版アニメ最新作「未来のミライ」が20日から全国で公開される。妹ができた4歳の男の子、くんちゃんの心の変化を、時空を超えた冒険とともにファンタジックに描いていく。細田監督に、今作を製作したきっかけを聞いた。
ウナギノボリ
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映画は、4歳のくんちゃんの家に、生まれたばかりの妹がやって来るところから始まる。妹に、両親の愛を奪われたと感じるくんちゃん。ところが、不思議な少女“ミライちゃん”が現れ、くんちゃんは彼女に導かれ、時を超えた家族の物語へと旅立っていく。くんちゃんの声を女優の上白石萌歌さん、ミライちゃんの声を黒木華さんが担当し、くんちゃんの両親を星野源さんと麻生久美子さんが演じている。ほかに宮崎美子さん、役所広司さん、福山雅治さんらも出演している。
――今回の作品を作る上で、一番の軸にしたものは何でしょう。
4歳児を通して世界を見たらどう見えるか、というのが一番の軸だと思います。自分自身、2人の子供の親として過ごしながら、子供時代を生き直している感覚があります。来年、上の子が小学校に上がるんですけど、来年、小学校かと思うと、自分も小学校に入る前のことを思い出してドキドキしてきちゃうんです(笑い)。そういうところが一番のポイントになっていると思います。
――細田監督の作品は「サマーウォーズ」(09年)以降、ご自身の体験が物語の大きなヒントになっています。ご自身の体験を普遍的な物語として作り上げるために、どのようなことを意識しているのでしょうか。
ネタがネタだけに、(テーマ曲を担当した山下)達郎さんと打ち合わせしているとき、「すごい、また今回も私小説的ですね」と言われちゃいましたけど(笑い)、自分としては、やっぱり今しか体験できない小さい子と一緒に過ごすということについて、うそをついてもしょうがないというか、架空で作ってもしょうがないという気がするんです。逆に言えば、今、人生の中で特別な時間を生きているという自覚があります。
今って、家族という形が社会の変化とともに変わってきている。でも、小さい子供に抱く親の気持ちというのは、どこか共通しているのではないかと思うのです。そういうところが、特に意識しているわけではないですけれど、モチーフとして普遍的なのではないかと思います。それは実は、カンヌに行ったときに感じました。
――この映画の最初のお披露目が、今年5月に開催されたカンヌ国際映画祭期間中の「監督週間」でした。
上映が、マスコミ向けと公式と2回あったのですが、2回とも皆さん、とても好意的に拍手をくださって、上映中の笑い声もたくさんあって、それがうれしかった。そのときに思ったのが、子供というのは社会化されていない、つまり4歳児ってまだ、日本人としての自覚がないじゃないですか。ということは、他の国の子供たちも、その国において社会化されていないわけですよね。だからこそ、どんな国の中でも共通して感じることがあり、映画を通していろんな国の人とコミュニケーションがとれるのではないかという気がします。そういうものを普遍性と呼ぶなら、普遍性といえるのかもしれないですね。
<プロフィル>
ほそだ・まもる 1967年生まれ、富山県出身。金沢美術工芸大学卒業後、91年に東映動画(現・東映アニメーション)に入社。アニメーターを経て、97年にテレビアニメ「ゲゲゲの鬼太郎」(第4期)で演出家に。99年「劇場版 デジモンアドベンチャー」で映画監督デビュー。筒井康隆さん原作のアニメ版「時をかける少女」(2006年)で注目され、09年、自身初となるオリジナル作「サマーウォーズ」を発表。11年、アニメーション映画制作会社「スタジオ地図」を設立。そのほかの作品に「おおかみこどもの雨と雪」(12年)、「バケモノの子」(15年)がある。
(取材・文・撮影/りんたいこ)
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