故・水木しげるさんのマンガ「ゲゲゲの鬼太郎」の新作テレビアニメ(フジテレビほか毎週日曜午前9時~)。1968~69年にテレビアニメ第1期が放送され、半世紀にわたって愛され続けてきた人気作で、過去には、環境問題やバブルで浮かれる社会が描かれるなど時代を映す鏡になってきた。第6期の新作は、鬼太郎が現代ならではの人間の心の闇や社会の中から生まれた妖怪に立ち向かう。第1期などで主人公・鬼太郎を演じた野沢雅子さんが、父の目玉おやじ役として出演したことも話題だ。アニメを制作する東映アニメーションの永富大地プロデューサーに、時代を映す鏡としての第6期、野沢さん起用の裏側などについて聞いた。
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「ゲゲゲの鬼太郎」は、主人公の鬼太郎が、ねずみ男、砂かけばばあら個性的な仲間の妖怪たちとさまざまな事件に立ち向かうマンガ。第6期は、第1話から今の時代を描くことを印象付けた。渋谷のスクランブル交差点で、信号無視をしたらどうなるか?という動画を撮影する若者が突然、木になってしまう。道行く人々は、木になった様子をスマートフォンで撮影し、SNSにアップし、その人たちも木になってしまう。
スマートフォン、SNSが普及した現代ならではの展開。永富プロデューサーは「自己顕示欲のために動画を配信したりSNSを利用するなんて、10年前には無かった。『ゲゲゲの鬼太郎』の妖怪は西洋のモンスターとは違う。人間の心や社会の中から生まれるもの」という思いがあったという。
「ゲゲゲの鬼太郎」は、時代によって変化してきた。71~72年に放送された第2期では、当時、問題になっていた環境破壊、公害などがテーマのエピソードがあった。バブルまっただ中の85~88年放送の第3期では、自然や他人に対する思いやりや優しさが失われた時代が舞台となった。永富プロデューサーは「過去の作品をひもといてみると、時代を映そうとしたのではないようです。結果的に時代を映す鏡になってきた」と話す。
第6期は、50周年記念作でもある。ただ、永富プロデューサーは「最初から50周年作品として企画されたわけではなく、後で50周年と気付いたんです」と明かす。「弊社など各所から、そろそろ鬼太郎の出番じゃないか?という空気があった。第5期の時もそうだったようです。不思議ですよね。妖怪が呼んでいるのでしょうか? 水木先生もそういうことをおっしゃっていたそうです」と話すように、何かに導かれるように制作されることになったという。
第6期の主人公・鬼太郎はクールだ。鬼太郎の描かれた方は作品によって異なる。原作では人情に薄く、どこか冷めたキャラクターとして登場したこともあった一方で、アニメでは、人間のために悪をやっつける正義のヒーローとして描かれたこともあった。永富プロデューサーは「第6期の鬼太郎は、人間を助けるが、何も言わずに立ち去る。人間が悪かったら、容赦なく切り捨てることもあります。子供に嫌われるかもしれません。でも、振り切った表現をしたかった」と話す。ただの正義のヒーローではない鬼太郎の魅力をしっかり伝えたかったようだ。
第6期は、第1~5期の長きにわたって目玉おやじの声優を務めてきた田の中勇さんが亡くなってから初めての作品。第1期などで鬼太郎を演じた野沢さんが、父の目玉おやじ役として出演していることも話題になっている。田の中さんが演じた目玉おやじの「おい!鬼太郎」というフレーズはあまりにも有名だ。永富プロデューサーらスタッフは、目玉おやじの配役に悩んだ。
「議論があり、いろいろな意見がありました。中には『野沢さんに!』という声もあったけど、前番組の『ドラゴンボール超」でも主人公の孫悟空を演じられていましたし、過去には鬼太郎を演じられていたので、そんな失礼なお願いはできない……とも考えていた。でも気になったんですよ。それとなく、野沢さんに近い人に聞いてみたら『嫌ではない』というお話でしたので、オーディションに参加してもらうことになりました」と明かす。
永富プロデューサーは、野沢さんが演じた目玉おやじのサンプルを聞いて驚いたという。「前からやっていたんじゃないですか!?」と感じるほど野沢さんの演技は自然だった。野沢さんは以前、目玉おやじの演技について「田の中さんを引きずることはやめようとした」と話したことがあった。田の中さんのものまねではなく、野沢さんならではの演技で、自然でもある。野沢さんのすさまじさに改めて気付かされた視聴者も多かったのではないだろうか。
第6期はほかにも、ねこ娘が8頭身のモデル体型の美女になったり、ダイナミックなアクションシーンがあったりと見どころが盛りだくさんだ。永富プロデューサーは「人情話、ホラー、コメディー、アクションもある。バリエーションを豊かにしています。これからも、見たことの無い『鬼太郎』をお見せします」と話す。第6期は、どのように時代を映していくのか……。「見えてる世界が全てじゃない」というキャッチコピーのように、見えない大切なことに気付かされるかもしれない。
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