北川景子:篤姫熱演の裏側 初大河で感じた「苦しみ」「重圧」と「自己責任」

NHKの大河ドラマ「西郷どん」で篤姫を演じている北川景子さん (C)NHK
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NHKの大河ドラマ「西郷どん」で篤姫を演じている北川景子さん (C)NHK

 俳優の鈴木亮平さん主演のNHKの大河ドラマ「西郷(せご)どん」に篤姫役で出演している北川景子さん。2月4日放送の第5回「相撲じゃ!相撲じゃ!」で初登場してからここまで、少女らしい無邪気さと姫としての凜(りん)とした美しさやたたずまいで、新しい篤姫像を作り上げ、視聴者からも好評を得ている。一方で「いろいろな方が演じていたから、自分だけのオリジナリティーのある篤姫をどうやったら演じることができるんだろうって、苦しみもありました」と明かす北川さんに、撮影の裏側を聞いた。

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 ◇“自分らしさ”意識も「プレッシャーがすごかった」 

 篤姫と大河ドラマといえば、2008年放送の「篤姫」での宮崎あおいさんがあまりにも有名だ。今回、初めての大河ドラマ出演で、この大役を担うことになった北川さんも「10年前に宮崎あおいさんが演じられたってことは皆さんの記憶の中にもまだまだ新しいと思う」と認める。

 まず意識したのは「自分らしさ」で、北川さんは「今回はあくまで西郷隆盛が中心になった作品で、あくまで篤姫は脇を固める役。(原作者の)林真理子先生と(脚本の)中園ミホ先生が作ってくださった、最初は男勝りではつらつとしていて、いい意味で“普通の女の子”って部分を出せたらいいなと思いましたし、そこから少しずつお姫さまらしさを出していけたらというのはありました」と振り返る。

 どんなに意識したからといって、簡単に体現できるものではなかったようで、「(撮影に)入る前はすごく緊張していて不安もあって、初登場の第5回の放送を見たときに何かをつかむことはできたんですけど……。でも、もっとこうすればよかったというのもあって、放送の翌日にプロデューサーに『評判、よかったよ』って言ってもらうまで全然、肩の荷が下りない感じ。そこでようやくこれで1年頑張っていけそうだって思ったくらい、プレッシャーがすごかった」としみじみと思い返す。

 ◇課題は「どこまで気持ちを篤姫に近づけられるか…」

 「篤姫」という役名の大きさからくる「重圧」。さらに一人の人物の一生を描く大河ドラマならではの展開の早さにも手を焼いたという北川さん。「1年で47回あるとはいえ、史実を全部追っていくと収まりきらないし、飛ばすところはどんどん飛ばしていくので。私もあっという間に於一(おいち)から篤姫になりましたし、天璋院になるもあっという間。一人の人物の一生を演じるというのも初めてで、気付いたら台本は1年後になっていたりするので……」と説明する。

 「ト書きではたった一行のことでも、その1年の間に篤姫にもいろいろなことがあったと思うので、想像して、膨らませて、深めていきながらやっていくしかない。ただ自分には経験のないことも多いので、お家のために嫁ぐとか、お世継ぎを必ず生まなくてはいけない、その責任であるとか、どこまで気持ちを篤姫に近づけられるかが自分の課題にはなっている。今でも放送を見ると、こうしたほうがよかったなとか、課題はたくさん出てきますね」と苦笑いで語る。

 「でも、そのときに自分が出せる力を100%出して、全力で生きるってところは、篤姫と自分がリンクする部分でもあると思うので、やりがいはあります。今回の篤姫がどういう最期を迎えるのか、まだ分からないんですけど、どのシーンがラストになってもいいよう、日々演じています」と力を込めた。

 ◇役作りは完全自己責任「当たり前にできる人しかここには来ていない」

 今回、大河ドラマ初出演ということで、せりふはもちろん、所作に方言(薩摩ことば)、お琴、なぎなたまで、教育係の幾島(南野陽子さん)と出会ってからの篤姫と同様、覚えること、学ばなくてはいけないことが多かった。北川さんを、さらに驚かせたのがリハーサルでのある出来事だ。

 監督からの具体的な指示は「1ミリもなく」、それぞれキャストが一人一人が「私はこういうふうに役を考えてきましたっていうのを披露する場」だったといい、「演技に関しては、リハに行けば監督さんが指示をしてくれると思っていたから、びっくりしましたね」と北川さん。

 「それが当たり前にできる人しか、ここには来ていない。所作も時代劇特有のせりふの言い回しも当然、分かった上。そこはもう基本中の基本で、その上に自分はどういう役作りをしてきたのか披露する。本当に自己責任なんだっていうのを知って驚きましたし、すごく信頼して役を預けてくれているんだと思って、責任感も増しました」と語る。

 ◇評価は甘くない大河「役作りへの意見は真摯に受け止め」

 そんな北川さんの努力や思いは確実に篤姫の演技に結実している。3月25日放送の第12回「運の強き姫君」では、将軍・家定(又吉直樹さん)との婚儀が正式に決まった篤姫が、吉之助への思いを断ち切り、養父・斉彬(渡辺謙さん)の思惑や、自分の運命をすべて受け入れる姿が描かれ、北川さんの熱演と共に視聴者の涙を誘った。

 北川さんは「大河をやらせていただけると聞いて、決して評価は甘くないなって思ったので、日々、ワンカット、ワンカットを全力でやってきました。1年やり終えたときには、皆さまからいただいた声が励みになり、明日からの精進につながっていくと思うので、今後も役作りへの意見は真摯(しんし)に受け止めたいです」と最後まで真剣なまなざしで語っていた。

 「西郷どん」は、明治維新150年となる2018年放送の大河ドラマ57作目。薩摩の貧しい下級武士の家に生まれた西郷隆盛(吉之助、鈴木さん)の愚直な姿にカリスマ藩主・島津斉彬(渡辺謙さん)が目を留める。斉彬の密命を担い、西郷は江戸へ京都へと奔走する。やがて勝海舟、坂本龍馬ら盟友と出会い、革命家へと覚醒し、明治維新を成し遂げていく……という内容。NHK総合で毎週日曜午後8時ほかで放送。

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