話題のアニメの魅力をクリエーターに聞く「アニメ質問状」。今回は、暁佳奈さんのライトノベルが原作の「ヴァイオレット・エヴァーガーデン」です。京都アニメーションの石立太一監督に作品の魅力を語ってもらいました。
ウナギノボリ
「光る君へ」より昔! 最も古い時代の大河ドラマは? 1976年「風と雲と虹と」のあらすじ
その少女は、心がないのではなく、心を理解できない。故に人の命を奪うことすら躊躇(ちゅうちょ)なくできる。大陸を二分する大戦の最中、道具としての存在でしかなかった少女兵。ヴァイオレット・エヴァーガーデン。そんな彼女が無自覚ながらも最も大切に思う、上官でもあるギルベルト・ブーゲンビリア少佐。彼に別れの際に告げられた「愛してる」という言葉。彼女にはその言葉の意味を理解できなかった。
終戦から数カ月後、自動手記人形と呼ばれる代筆業の仕事に出合い、「愛してる」の意味を知るためにその職業に就く。さまざまな依頼者のさまざまな感情に触れ、一つ一つ心を理解していく。あの言葉の意味を知るために。
--アニメにするときに心がけたことは?
原作の小説を読ませていただいたときから、一つ一つのエピソードが本当に魅力的でした。ただストーリーとしてはオーソドックスなものが多く、奇をてらうようなものではなかったので、いかにこの王道のストーリーに説得力を持たせるか、という点はすごく気にしました。なのでファンタジーですが、絵としての写実性、世界観の構築、地に足がついた世界をいかに見せられるかを常に心がけて制作しました。
第3話のルクリアの手紙のシーンはシナリオを最初に読ませていただいたときから、自分でもウルッときていたので、視聴していただいた方にそう言っていただけてホッとしております。
純粋に自分が面白いと思った作品のアニメ化に際し、監督という立場で関わらせていただけるのがうれしかったです。大変だったのは、ヴァイオレットが基本、本当に微妙に少しずつ成長していく様をいかにちゃんと表現するかということでした。シリーズですので、各話数コンテを担当してくださる方も違いますし、流れを追ってヴァイオレットの成長を描く上で成長のバランスを取るのが難しかったです。あとは、自分で舵(かじ)を取ったので、自己責任ですがカロリーの高い作品で「作る」という作業はやはり大変でした(笑い)。
しっかりとヴァイオレットという少女の人生を描きたかったので、最初の方の話数は何も分からないヴァイオレットから始めたくて、彼女自身の心の機微が少なく静かなドラマ展開だったと思います。後半にいくにつれて、彼女自身の心が大きく膨らみ、それが大きく揺れてドラマとしても見応えは増していくと思います。
原作にあるエピソードも後半に固まっているので、原作を読んで好きだったエピソードがある方は、後半戦に期待していただければと……! ちなみに第5話は、出版されている上下巻には載っていませんが、弊社の「京都アニメーション大賞」の応募作だった状態の「ヴァイオレット・エヴァーガーデン」には最初からあったエピソードです。出版時に泣く泣く切ったエピソード。アニメオリジナルではなく、原作のエピソードでした。
そのエピソードが、3月に弊社のKAエスマ文庫から発売される「外伝」に収録されることになりました。あのまま世に出ることなく、皆さまに読んでいただけないのかと思っていましたので、うれしいです。
後半に向けてどんどん面白くなっていく作品だと思っておりますので、どうか最後までご視聴いただけると幸いです。何卒、よろしくお願いいたします。
京都アニメーション 監督 石立太一
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