アニメ質問状:「キノの旅」 “2017年のキノの旅”を作る 多面的な寓話を幅広い世代に届ける

テレビアニメ「キノの旅 -the Beautiful World- the Animated Series」の一場面(C)2017 時雨沢恵一/KADOKAWA アスキー・メディアワークス/キノの旅の会
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テレビアニメ「キノの旅 -the Beautiful World- the Animated Series」の一場面(C)2017 時雨沢恵一/KADOKAWA アスキー・メディアワークス/キノの旅の会

 話題のアニメの魅力をクリエーターに聞く「アニメ質問状」。今回は、電撃文庫(KADOKAWA)の人気作が原作のテレビアニメ「キノの旅 -the Beautiful World- the Animated Series」です。EGG FIRMの大澤信博プロデューサーに作品の魅力を語ってもらいました。

ウナギノボリ

 ――作品の概要と魅力は?

 キノという名の主人公が、言葉を話すバイクのエルメスと共にいろんな国を旅して回るお話です。キノが旅するさまざまな国、ある国の常識は別の国ではとても非常識で唾棄すべきことです。旅の中で描かれる物語は、ある人にとってはとても残酷に感じられたり、ほかのある人にとっては滑稽(こっけい)な冗談に思えたりします。「キノの旅」の最大の魅力は「物事の見え方、感じ方は一つではない」ということです。そういった多面的な寓話が本作の最大の魅力だと思います。

 ――アニメにするときに心がけたことは?

 原作は既に2003年から07年にかけて何度かアニメ化されています。私は当時もプロデューサーとしてアニメ化に関わってきました。それぞれ、原作の魅力を引き出して、さらに原作を上回る作品になるように心がけてきましたが、今回のテレビアニメ化で特に意識したことがあります。それは“2017年のキノの旅”を作るということです。

 さきほどキノの魅力は多面的な寓話だとしましたが、人によって世代によって見方や感じ方が全然違うと思います。私自身、03年当時に読んだ原作の印象と今読んだ印象は違います。アニメを見ても、今の若い世代(小学生や中学生)と大人では感じることが違うはずです。当時の中学生と今の中学生でも感じ方が違うと思いますし、さらに当時アニメを見ていた中学生が今、大人になって感じることも違うと思います。

 そういったキノの多面的な寓話を今の幅広い世代に届けるために、今回は若い世代の田口智久監督と脚本家の菅原雪絵さん、スタジオラルケの若いスタッフにお任せしました(当時のアニメ化から関わっているスタッフは私と原作者・時雨沢恵一先生、黒星紅白先生だけです……)。ぜひ、今の「キノの旅」を楽しんでいっていただければと思います。

 ――作品を作る上でうれしかったこと、逆に大変だったことは?

 今回のアニメでは時雨沢さんがシナリオから設定、絵コンテ、アフレコ、果てはダビング(せりふ、効果音、音楽をミックスする作業)までご一緒してアニメを作っています。こうして原作者の方と一緒にアニメ作りができることはとてもうれしいことです。


 ――今後の見どころを教えてください。

 たくさんある魅力的な原作のエピソードから苦心して12本選び抜きました。原作ファンの方々にも初めて「キノの旅」に触れる方々にも、いろいろな世代の方に楽しんでもらえるよう、とても残酷なお話から、とても痛快、愉快なエピソードまでバラエティーに富んだアニメになりました。映像化困難! これは無理だろう……という話にも挑戦していますし、原作人気も高く、既にアニメ化した「優しい国」や「大人の国」などもアニメ化しますのでお楽しみに。

 ――ファンへ一言お願いします。

 今回のアニメを見てくださる方々が、私たち作り手がまるで意図しなかった感じ方や印象を持ってくれたら、それは私たち作り手の最も意図するところかもしれません。ぜひ、いろいろな楽しみ方をしてもらえるとうれしいです。

プロデューサー 大澤信博(EGG FIRM)

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