人気ライトノベル「ソードアート・オンライン(SAO)」(電撃文庫)の初の劇場版アニメ「劇場版 ソードアート・オンライン -オーディナル・スケール-」(伊藤智彦監督)が18日、公開された。原作のシリーズ累計発行部数は全世界で約1900万部を誇り、テレビアニメ版も人気だったこともあり、劇場版も注目を集めている。テレビアニメ版、劇場版を手がけた伊藤監督に同作への思いを聞いた。
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「SAO」は、川原礫さん作、abecさんイラストのライトノベル。仮想空間への接続機器によってバーチャルリアリティーを実現した近未来を舞台に、さまざまなオンラインゲームを取り巻く事件が描かれている。テレビアニメ第1期が2012年7~12月、第2期が14年7~12月に放送された。劇場版は、川原さんが書き下ろしたオリジナルストーリーで、次世代ARデバイス・オーグマーが開発され、そのキラーコンテンツとなった専用ゲーム「オーディナル・スケール」に主人公キリトやアスナたちが参戦する。
伊藤監督は「サマーウォーズ」(細田守監督)で助監督を務めた経験があるものの、劇場版アニメの監督は初めて。製作を進める中で意識していたのは“映画であること”だった。「映画とは何だろう?というのが、ずっとキーワードでしたね。作品として世に出たので、結論はある程度出たのかもしれないのですが、まだ分からないんですよね。いろいろな試みはしてみました。細田守みたいに、映画をずっと志向してアニメを作ってきたわけではないのですから」と考えていたという。
「長回しで撮ったから映画っぽくなるわけでもない。カット数をどれくらいにしたらいいのか、観客がどの程度、情報を読み取ってくれるのか……など映画的な空気を考えていました」と悩むことも多かったようだ。「細田監督に相談しなかったのか?」と聞いてみると、「やる前も終わった後もないですよ。いろいろ言われるので(笑い)」と明かす。
劇場版は、原作者である川原さんと伊藤監督が共同で脚本を手がけた。伊藤監督は「川原さんにプロットを出していただき、プロデューサー陣とも見ながら、シナリオにして、川原さんに調整していただいた。キャッチボールをしながら作りました。半年くらいはやっていましたね」と振り返る。川原さんとのやり取りは「ボールかな?という変化球を投げた時、『いいですね!』と言っていただけたこともありました。一緒に仕事をしやすい方ですからね」とスムーズだったようだ。
また、プロデューサーから「デートムービーにもなれば」という提案もあったという。伊藤監督は「最初、デートムービーと聞いた時は『ん!?』となった。ラブロマンスをいっぱいやればいいのか? それも違うということだった。『アルマゲドン』もデートムービーになるので、そういう意味だったようですね」と笑顔で語る。
「SAO」のテレビアニメの放送がスタートしたのは2012年で、伊藤監督にとって長く関わってきた作品でもある。伊藤監督にとって「SAO」とは「僕を海外のイベントに連れて行ってくれるありがたい作品。ウソです(笑い)」と冗談めかしつつ、「少年少女のピュアな作品で、最初は向いていないかもしれない……と思ったこともあった。結果として、さじ加減がうまくいったのかもしれません」と感じているという。
テレビアニメでは、主人公・キリトが「とにかく格好いい!」などと話題になり、キリトが躍動する姿が見どころの一つになっていた。伊藤監督は「原作はとにかく主人公が強く、『キリトさん、かっけぇ!』というのがあるのは聞いていて、それを作品の核にすべきだろうと考えた。要所要所でそれを考えながら作ったところもあります。今回の劇場版もそうですね」と話す。
伊藤監督は、アニプレックスが新設したアニメのシナリオ制作チーム「スクリプトルーム」の“ルーム長”に招かれたことも話題になっている。同チームでは、所属ライターを一般募集し、同社の企画制作グループと連携し、アニメのシナリオを手がける。伊藤監督は「面白いメンバーが集まりました。自分は“長”となっていますが、メンバーの一人と考えています。さまざまな視点からの指摘があれば、作品が豊かになる。文芸だけでも、日本のアニメが海外に勝てるようにしたい」と意気込む。
また、「君の名は。」(新海誠監督)などのヒットによって、劇場版アニメが注目され、アニメを取り巻く状況が変化しているが、伊藤監督は「ありがたいことです。劇場版アニメの企画が増えているようですね」と語りつつ、「(他の作品と劇場版『SAO』を)比べられても困るかな」と笑う。「SAO」の今後の展開はもちろん、“ルーム長”としての伊藤監督の活躍もますます注目されそうだ。
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