フランスのプロリーグ「トップ14」に五郎丸歩選手を送り出したラグビートップリーグの「ヤマハ発動機ジュビロ」で活躍する三村勇飛丸選手。2014年度にはキャプテンとしてチームを創設以来初の日本選手権優勝に導き、16年11月にはジェイミー・ジョセフ新ヘッドコーチ(HC)のもと日本代表デビューを飾った。代表として世界を相手に戦う三村選手に海外ラグビーの魅力や「トップ14」挑戦中の五郎丸選手について聞いた。
ウナギノボリ
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――三村選手にとって、海外ラグビーを見る魅力とは?
勉強ですね。海外の同じポジションの選手がどんなプレーをするのかを見て、自分のプレーの参考にしています。今年(16年)のスーパーラグビーは、普通に観客として見にいっていましたよ(笑い)。特に参考になるのは、オーストラリアの選手ですね。南アフリカやニュージーランドのフランカーには大柄な選手が多いけれど、オーストラリアにはすばやく動いてブレークダウンワーク(タックル後のボール争奪戦での動き)をしている選手が多いイメージがあります。名を挙げるなら、今年、パナソニックワイルドナイツに加入したデビッド・ポーコックですね。ワークレート(仕事量)が高くて、ジャッカル(タックルして相手からボールを奪い取るプレー)がうまい。自分の中でお手本になっているし、目指すべき姿だなと思っています。
――今シーズンは、初めて日本代表に選ばれて、欧州遠征を経験しました。生で経験した欧州のラグビーはいかがでしたか。
ヨーロッパはすごかったですね。特にウェールズ戦が行われたカーディフでは、7万人以上の観客の前でプレーできたのは素晴らしい経験でした。プレー面では、まっすぐ当たってくるのが印象的でした。その相手にタックルして、それを繰り返しているうちに疲労が足に来て、足が動かなくなる。日本では、走り合うことで疲れて足が動かなくなることがあるんですが、疲労の仕方の種類が全然違うんです。テストマッチの最初の相手のアルゼンチンもフィジカルが強いといわれているけれど、スペースにボールを運んでいるなという印象でした。
――日本代表欧州ツアーの最終戦はフランスでの試合でした。
日本代表の遠征最後の試合、フィジー戦は、ナント郊外のバンヌという小さな町で行われたんです。同じ日にはパリでフランス対ニュージーランドの試合があったし、日本とフィジーの試合にお客さんなんて来るのかな?と思ってたんですが、たくさんのお客さんが見に来てくれて、どちらのチームにもホームのような応援をしてくれました。攻めている方を応援する感じなんですが、ここが盛り上がるところだ!というところで「ウワー!」としっかり盛り上がる。ラグビーの文化が根付いているな、と感じましたね。
――フランスのラグビーにはどんな印象を持っていますか。
スクラムが強いというイメージですね。僕たちヤマハもスクラムを大事にしているし、スクラムを組むことだけを目的にフランスへ遠征したくらいですから、フランスのラグビーは僕たちにとってリスペクトしている存在です。フランスのスクラムですごいなと感じるのは、後ろの選手も全員が本気で押してくることです。フロントローの3人はこっちが組み勝っているかもしれないけど、向こうは8人が固まりになってグーッと押してくる。日本では経験できないものがありましたね。スクラム遠征で組んだ相手の中では、「カストル・オランピック」というチームはすごかったですね。組んでから、ボールが入ると同時に、全員が同じ方向に同じ足を出して、一斉に押してくる。意思統一が本当にすごい。フランス人は個性的だという印象がありますが、これだけ細かいことを全員が意識して徹底したら、そりゃあ強いなと思いました。
――そのフランスに、五郎丸選手がチャレンジしています。
素晴らしいことですよね。フランスというだけでもすごいのに、「RCトゥーロン」ですから。試合に出ているメンバーだけでなく、リザーブからウオーターボーイまで、誰もが知っているような選手がそろっているチームですからね。そこに、ヤマハでずっと一緒にプレーしていた選手が行っている。本当に光栄です。しっかり結果を残して、今まで以上の経験を持ち帰ってくれると思います。ヤマハにとって五郎丸さんは、自分だけじゃなく、チーム全体にとって精神的支柱でしたね。後ろに五郎丸さんがいるというだけで、FWは安心できる。そんな存在です。今は五郎丸さんがいない分、みんなが頑張らなきゃいけない、その意識があって成長できているのが大きいと思います。
――三村選手自身は外国でプレーすることに興味はありますか?
これまでいろんな経験をさせてもらってきた中で「自分の力はこれくらいかな、伸びしろはこれくらいかな」と、自分で決めていた部分があったけど、今回初めて日本代表に選ばれて、「やってみたら通用するところがあるんだな」「レベルの高い練習をすれば、こんなこともできるようになるんだな」「伸び幅はまだまだあるんだな」と感じているところです。まだまだ到達できてはいないけれど、可能性はあると思うし、今はそれが、自分自身楽しみです。
ジョセフHCは、体が大きくない僕のような選手のプレーもしっかり見て、パフォーマンスを評価すればチャンスを与えてくれるということがよく分かった。ジェイミーが僕らの能力を信じて、期待してくれるから、選手もその期待に応えたいと思って頑張る。いい循環ができています。ただ、僕の場合は、今回初めて日本代表に入ることができたけれど、代表にいつでも呼んでもらえるような選手じゃないことも自覚しています。自分の課題を克服していければ、また代表に呼んでもらえるかもしれない。今はそれを目標に、一日一日を大切にして、ラグビーに取り組んでいきたいと思っています。
みむら・ゆうひまる 1989年、栃木県生まれ。佐野高校でラグビーを始め、明治大学を経て「ヤマハ発動機ジュビロ」へ。14年度はキャプテンとして同チームを創設以来初の日本選手権優勝に導く。16年11月、アルゼンチン戦で日本代表デビュー。ポジションはフランカー。
*……WOWOWでは、フランスのプロラグビーリーグ「トップ14」を、五郎丸選手が所属する「RCトゥーロン」の試合を中心に年間57試合を放送予定。第15節の「トゥールーズvsクレルモン・オーヴェルニュ」はWOWOWライブで31日深夜0時45分から、「RCトゥーロンvsラシン92」は17年1月2日午前4時半から生中継。第16節「スタッド・フランセvsトゥールーズ」はWOWOWライブで17年1月8日深夜2時から放送。「クレルモン・オーヴェルニュvsRCトゥーロン」はWOWOWプライムで17年1月9日午前4時45分から生中継される。
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