離婚騒動で揺れるブラッド・ピットさんとアンジェリーナ・ジョリー・ピットさんが夫婦役で共演をした「白い帽子の女」(アンジェリーナ・ジョリー・ピット監督)が24日に公開される。共演は「Mr.&Mrs.スミス」(2005年)から約10年ぶり。美しい南仏のリゾート地を舞台に、壊れかけて傷ついた夫婦の心理劇を、若いカップルを対照に置きながらアンジー自身がじっくりと撮り上げた。
ウナギノボリ
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1970年代。南仏の浜辺に、米国人小説家のローランド(ピットさん)とその妻バネッサ(ジョリー・ピットさん)がバカンスに訪れる。ローランドはカフェや海岸で1人で過ごし、バネッサは部屋に閉じこもっている。ある日、隣に若い新婚のカップルのレア(メラニー・ロランさん)とフランソワ(メルビル・プポーさん)がやってきた。ふと部屋の壁に穴を見つけたバネッサは、隣のカップルの様子をのぞき……という展開。
出演のみならず監督、脚本、製作をこなしたアンジーの意欲作。14年にハネムーンで訪れたマルタ島で撮影している。傷ついた夫婦がどこに向かうのか。緊張感がずっと続く。ジェーン・バーキンさんの歌が流れて、一組の美しい夫婦がバカンスにやってくる。心地よさそうな風が吹く、まぶしい入り江の風景が広がる。しかし、夫婦関係は冷え切っていた。ただの倦怠(けんたい)期ではない。過去の不幸により、妻バネッサの心は崩壊しているらしい。夫のローランドはバネッサを全面的に受け止めきれず、「クソ女」とありきたりの言葉でののしる。バネッサは気だるそうにベッドに横たわり、涙でマスカラがにじんだ大きな目で、「悲しみに酔っているだけ」と夫に思わせる。だが、あやうさと強さが一体になったような複雑な内面が、アーティストの夫をまだまだ引き留めている。
幸せに包まれた初々しい若いカップルは、2人のかつての姿なのだろうか。のぞき穴という切り取られた部分から若いカップルを見ることによって、夫婦の遠い日への羨望(せんぼう)が感じられる。やがて、彼らはカップルと交流を持つようになる。のぞくことによってねたましさを増幅させるバネッサは痛々しい。心の奥底をえぐり出すような激しさでアンジーが熱演している。一方、夫を演じたピットさんは、次第に優しい顔つきになり、微妙な変化を演じている。音楽は、数々の名作を手がけるガブリエル・ヤレドさん。同監督の「最愛の大地」(11年)に続いて2作目のタッグとなった。音楽が、キリキリした夫婦の心模様を見事に表現している。24日からシネスイッチ銀座(東京都中央区)ほかで公開。(キョーコ/フリーライター)
<プロフィル>
キョーコ=出版社・新聞社勤務後、映画紹介や人物インタビューを中心にライターとして活動中。趣味は散歩と街猫をなでること。クリント・イーストウッド監督最新作「ハドソン川の奇跡」にナミダでした。
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