ソニー・インタラクティブエンタテインメント(SIE)が8日、米ニューヨークで発表会を開き、家庭用ゲーム機「プレイステーション4」の新型モデルを2種類発表した。より美しい映像表現を望むコアユーザーの要望に応えつつ、現行モデルの改良版を値下げして出す戦略に出た。10月に発売されるVR(仮想現実)のヘッドマウントディスプレー「PSVR」を後押しをするビジネスとなりそうだ。
ウナギノボリ
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SIEのアンドリュー・ハウス社長は発表会で「もはやリビングがPSのシステムの中心ではない。ゲーマーが中心だ」と言い切った。1990年代からゲーム機のシェア争いでは、リビングルームを“制した”ハードが覇権を握ってきたがそれは過去の話だ。どこからもアクセスできるクラウド技術の普及が進み、日本ではスマートフォン向けの無料ゲームが爆発的に普及した。
ソニーは、据え置き型ゲーム機市場でこそ世界のナンバーワンだが、携帯ゲーム機では任天堂の優位は変わらず、その携帯ゲーム機市場もスマートフォン向けゲームの影響で、世界的には踊り場を迎えている。そんな中でタイプの違う2種類のPS4は、より高性能・高機能を追求する少数のコアユーザーの要望と、ゲーム機の値下げを要求する大多数のライトユーザーの要望をかなえた。
ハイエンドモデルの「PS4プロ」は、ハイスペックなゲーム体験が可能なPCに対抗する戦略といえる。PS4とPCは、ゲーム業界が熱心に研究開発に取り組んでいる「VR」で争っている。PCはその商品性質上年々進化を続けており、現行のPS4では性能的に対抗できなくなっていた。PS4は元々、欧米でハイスペックなゲームを求める関係者の需要に応えて誕生した経緯もあり、高性能化は必然の流れだった。
一方で、ゲーム機の世界的な普及に値下げは不可欠で、ゲーム機は、値下げするたびにユーザーを拡大し、市場を広げてきた歴史がある。その反比例する要望を満たすのが、2種類のPS4を出すことだった。
さらにいえば10月に発売される「PSVR」を抜きには語れない。VRはここ数年メディアでも取り上げられ、既にさまざまなVR商品が市場に投入されているが、プロモーション不足とコンテンツ不足 も手伝って、ここ数年“今年はVR元年”とお題目を唱えてはいるものの、期待外れというのが現状だ。
だが世界的なゲームメーカーであるSIEが開発したPSVRは予約だけで希望者が殺到するほどの期待を集めている。VRはそれまでのテレビゲームにない異質な体験ができることから、将来的な苦戦が見込まれる据え置き型ゲーム機市場を拡大させ、ビジネスチャンスを広げる可能性もある。
現状でSIEが、携帯ゲーム機市場で任天堂の優位を覆すことは難しく、ビジネスモデルが全く異なるスマホゲームでのシェア拡大も見通せない。そうしたこともあって、異質なゲーム体験を可能にするPSVRは、PS4とワンセットというべき存在で、これを成功させることは、SIEの至上命題だ。単純な映像の美しさだけでゲーマーの心を動かせないことは、SIEが誰よりも理解していることで、二つの新しいPS4を同社がPSVRに生かしていくか今後のカギを握りそうだ。
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