小泉今日子さんと二階堂ふみさんがダブル主演した「ふきげんな過去」(前田司郎監督)が25日から公開される。劇団「五反田団」を主宰する劇作家の前田さんによるオリジナル作品。退屈した女子高生の前に死んだはずの伯母が現れたひと夏を描いている。
ウナギノボリ
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18歳の果子(二階堂さん)は、退屈でつまらない毎日を送っていた。そこから抜け出す手立ても見つからない。実家は東京・北品川にあるエジプト風豆料理屋。祖母・サチ(梅沢昌代さん)、母・サトエ(兵藤公美さん)、父・タイチ(板尾創路さん)、いとこのカナ(山田望叶さん)と過ごす変わりばえのない毎日だったが、家族の前に、18年前に死んだはずの伯母の未来子(小泉さん)がひょっこり現れる。未来子は果子が小さかった頃、爆破事件を起こしたことがあったといい、何かに追われているらしい。部屋に転がり込んだ未来子と衝突する果子は……という展開。
全編、独特の空気が流れている。二階堂さんが演じる果子は、死ぬほど退屈でとことんアンニュイだ。繰り返される豆をむく作業が、日常の退屈さを物語る。そこへ、前科持ちだという未来子が現れ、その空気を壊していく。しかし、死んだはずの人間の登場に、ドラマチックな展開はさほど見られない。未来子と家族にとっては、18年前の日常の続きが始まったにすぎないようなムードが漂う。大人は、さまざまなことをなかったことにできるものなのだろうか……。大人になる手前のイライラを募らせながら、傘をズルズルと引きずって歩く果子は、伯母さんに心をかき乱されていく。
だが、見ている側からすると、果子と未来子は相似形に見える。文字通り、果子は未来子の「過去」であり、未来子は果子の「未来」のようだ。夜、果子たちが歩きながらいつのまにか森に入っていくシーンは、日常とファンタジーが見事に地続きとなり、時間がゆがんだような不思議な感覚が広がる。「ジ、エクストリーム、スキヤキ」(2013年)に続いて2作目、前田監督のオリジナル脚本。ムーンライダーズの岡田徹さんが前作に引き続き、主題歌と音楽を担当している。25日からテアトル新宿(東京都新宿区)ほかで公開。(キョーコ/フリーライター)
<プロフィル>
キョーコ=出版社・新聞社勤務後、映画紹介や人物インタビューを中心にライターとして活動中。趣味は散歩と街猫をなでること。今月公開作では「裸足の季節」(シネスイッチ銀座ほか)がイチオシです。
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