幕張メッセ(千葉市美浜区)で4月29、30日に開催されたインターネット動画配信サイト「ニコニコ動画」(ニコ動)の大規模イベント「ニコニコ超会議2016」には、公共放送のNHKや石油会社のモービルなどニコ動と一見、関係ないような“無縁”の団体、企業も出展した。ニコニコ超会議では、一般的なビジネス向けイベントではない。“ネット世代”にアピールするために工夫を凝らしていた。
ウナギノボリ
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ニコニコ超会議は「ニコニコのすべて(だいたい)を地上に再現する」をコンセプトに、音楽やアニメ、ゲーム、政治、スポーツなどさまざまなジャンルを網羅したイベントで、12年に第1回を開催。前回の「超会議2015」は2日間で約15万1000人が来場するなど人気イベントで、今年は約15万3000人が来場した。
しかし、「ニコニコ超会議では物が売れない……」とアニメ関連企業の関係者の声を耳にしたことがある。「コミックマーケット(コミケ)」や「AnimeJapan(アニメジャパン)」などアニメ、マンガ関連のイベントでは、出版社やアニメ関連企業が物販ブースを出展し、限定グッズを求めて行列ができるのをよく目にするが、アニメやマンガと親和性が高いようにも見えるニコニコ超会議では、物販で苦戦する企業も多いという。たしかに、ニコニコ超会議では、物販に力を入れているブースは少ない。ニコ動グッズなどを扱う物販ブース「超物販」があるものの、コミケなどと比較すると行列は控えめだ。
コミケでは、ホンダやグーグル、マイクロソフトなどさまざまな“無縁企業”が出展しているのも話題だ。コミケに出展する企業は、人気作の限定グッズの販売や新作のプロモーションを目的とすることが多い。一方で、“無縁企業”の検索サイトのグーグルは12年夏のコミケで、SNSのカバーイラストを集めた画集などを抽選で無料配布するなど、サブカルチャーに関連した新たな取り組みをアピールする狙いで出展している。
NHKも14年冬、15年冬の2回にわたってコミケに出展し、同局の番組のPRのために、同人誌風の“薄い本”を配布して話題になった、しかし、初出展となった「ニコニコ超会議2016」では、コミケとはアプローチを変えた。「ニコニコ超会議2016」では、大河ドラマ「真田丸」のブース「超・真田丸」を出展。出演者のトークショーを開催したり、ドラマの題字にもなっている左官を体験できるようにした。「真田丸」のポストカードを配布したものの、イベントのための配布物は制作しなかった。関係者は「コミケには薄い本という文化があるので、小冊子を制作した。ニコニコ超会議のブースは“体感”をコンセプトにしているため、用意しなかった」と説明する。
そもそも、ニコニコ超会議には、ダンス動画「踊ってみた」や、楽器の演奏を披露する動画「演奏してみた」などに参加したり、“本物”を見に来るなど“ここでしかできない体験”を求めている参加者が多い。NHKのブースは、普段はなかなか見ることができない俳優が登場するなど“ここでしかできない体験”を楽しめることもあり、盛況で、担当者は「予想以上の反応」と喜ぶ。
エンジンオイル「モービル1」のブースも“体験”をテーマとしていた。モービル1は、「マイナス40度の世界では、バナナでクギが打てます」というテレビCMがかつて一世を風靡(ふうび)したが、ブースでは、氷点下の世界で“バナナでクギ打ち”を体験できるスペースを用意し、親子連れや10~20代の参加者が列を作っていた。担当者は、出展の狙いを「20、30年後にブランドを存続していくためには、若い人に認知していただかないといけない。CMが放送されたのは30年ほど前で、若い人は知らない。バナナでクギを打つ体験で、こんなCMもあったんだ……とブランドに興味を持っていただくきっかけになれば」と話す。
ニコニコ超会議には、一般的なビジネス向けイベントではない。商品を展示したり、グッズを配布しただけでは、そっぽを向かれてしまうこともある。“無縁企業”となれば、興味を持ってもらうのは、ますます難しい。さらにネットで興味のある分野しか見ない若者が多いという声もある。遠回りかもしれないが、商品やサービスの宣伝と感じさせないようにしつつ、“ここでしかできない体験”を提供し、面白がってもらうために知恵を絞っているようだ。
一方で、ニコニコ超会議に出展しても、すぐに商品やサービスのファンになってもらえるとも限らない。“ネット世代”の心をどうやってつかむか、より丁寧で息の長い施策も求められそうだ。
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