連載27年を誇るマンガ「ジョジョの奇妙な冒険」(ジョジョ)シリーズの中でも最高峰と評価の高いファン待望の第3部「スターダストクルセイダース」のアニメが4月から始まる。今も続く長期連載を振り返り、大きな転機だったという第3部について当時の担当編集者から話を聞いた。
ウナギノボリ
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「ジョジョ」シリーズは1986年から週刊少年ジャンプ(集英社)で連載が始まり、英国貴族の血を継ぐ主人公らの数世代にわたる戦いが展開されている。1部は、正義感あふれる青年ジョナサンと、謎の石仮面の力で吸血鬼になったディオとの対決が描かれた。2部は、ジョナサンの孫・ジョセフと、石仮面を作った化け物・柱の男との戦い。3部はジョセフの孫・空条承太郎らが、復活したディオを倒す旅に出る。現在は第8部「ジョジョリオン」が月刊マンガ誌「ウルトラジャンプ」で連載中だ。
作者の荒木飛呂彦さんがジャンプに初めてマンガを持ち込んだのは79年。約束なしで上京した荒木さんに応対したのが、後に「ハイスクール!奇面組」や「まじかるタルるートくん」などを担当する当時は新人編集者だった椛島良介さんだった。荒木さんは80年にデビューし、その作品は編集者やマニアに絶賛されたが、読者アンケートでの人気は振るわなかった。しかし、椛島さんは才能を評価して連載の提案を続け、ジョジョの連載が始まった。
当時のジャンプは黄金期。椛島さんは、ジョジョが日本人読者にはなじみのない英国貴族を主役にしたこと、荒木さんが「主役より描きたかった」という強敵・ディオの強烈すぎる個性を心配した。椛島さんの勧めもあって連載1年で、主人公も舞台もガラリと変えた2部へと突入。1部よりは人気になったものの椛島さんは「2部のボスはディオほどの存在感はなかった」と冷静に分析し、主人公が持つ特殊能力の「波紋」も話題になった半面、抽象的で分かりづらく限界を感じていたという。
そこで荒木さんが生み出したのが、超能力を可視化した「スタンド」という概念だった。キャラクターに背後霊のように寄り添う分身というべき存在で、火を使う、念写、鏡の世界から相手を攻撃する……など一芸の技があり、スタンド同士が対決するという設定だ。椛島さんは「スタンドがあるからこそ、連載が25年以上続いた」と絶賛するほど大きな転機となった。
スタンドという新たな魅力を加え、宿敵・ディオも復活し、主人公も日本人にした第3部は、椛島さんが「狙い通り。1部は不安で2部は限界。最後(3部)に開けた」という通り人気作に成長。名実ともにジャンプ黄金期を支える作品の一つとなった。
ジャンプといえば、「ドラゴンボール」や「スラムダンク」など「努力、勝利、友情」を押し出した少年マンガの王道作品がそろっていることで知られるが、その中で“異端”のジョジョがどうして人気となったのか? 椛島さんは「誤解されるのですがジャンプは王道だけでなく、異質な作品を育てる土壌もあるのです」と話す。
アニメやマンガに詳しい評論家の多根清史さんは「駆け引きやだまし合いは、『知恵と勇気で強敵を倒す』というジャンプ的な王道の延長。さらに、スタンドなどの異能力はパワーインフレに陥りやすかったバトルに新風を吹き込んだ。その上に型にはまらない主人公像がある。ジョジョは『新時代の王道』ゆえにヒットした」と分析する。
第3部で新時代の王道を確立した同作はその後も、人気に安住せず進化し続けている。これからどこまで連載記録を伸ばせるか楽しみだ。
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