人気ミステリー作家の伊坂幸太郎さんの小説を、名コンビともいうべき中村義洋監督が映画化した4作が、11~14日にWOWOWで特集放送される。伊坂作品の魅力について、中村監督は「世の中に普通にいる人の感情描写がすごくうまい。ちゃんと納得できるものになっていて、そこから事件が起こるんです。そこが好きなんですよ」と力を込める。今回放送される4作すべてに出演した俳優の濱田岳さんと中村監督に、伊坂作品の魅力を聞いた。(毎日新聞デジタル)
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特集放送は、「映画で“観る”伊坂幸太郎の世界」と題し、伊坂さんの小説を中村監督が映画化した4作を連日放送。球界のスターと空き巣、同じ生年月日ながら対照的な人生を歩む2人の青年の運命をつづる「ポテチ」(12年)の11日の初放送に合わせて、1人暮らしを始めた大学生が奇妙な隣人の計画に巻き込まれていく青春ミステリー「アヒルと鴨のコインロッカー」(07年)を12日に、売れないパンクバンドの曲が数十年後に思わぬ奇跡を生み出す痛快作「フィッシュストーリー」(09年)を13日に、首相暗殺犯に仕立てられた男の逃避行を描いたベストセラー小説の映画化「ゴールデンスランバー」(10年)を14日に放送する。
「アヒルと鴨のコインロッカー」で伊坂作品の監督を初めて務めた中村監督。同作は伊坂さん自身も映画化が難しいだろうと考えていたというが、中村監督は「無理やりでもやってやろうというのがあった」と当時を振り返り、「映像化が難しいのをなんとかやるのは全然苦じゃない。僕は楽しい」と笑顔を見せる。
伊坂作品の魅力について「リアルだから」という中村監督は、「アヒルと鴨~」の一場面を挙げて、その理由を説明する。「物語としてはこれから大変なことに遭遇していくんだけど、大変なことに遭遇する前の平和な日常ではなくって、地方都市の大学に東京からやってきた学生が、新居のお風呂場のカビに気がついてブルーになるという描写があって。いらないでしょ、そこ」と笑う。だがその描写があることで、「読んでいて信用できた。そこにそう感じる人が、何か起きたときにどう感じるかがすごく納得がいく。より感情移入できる」と力を込める。
一方、濱田さんは同シーンについて、「カビに気づくとか面白い描写なんだけど、(作中の)本人は嫌な出来事としてとらえている。それを面白いと思わせるところが僕も好き」と表現する。それぞれの作品に“面白い”描写があるといい、「コミカルなシーンを演じるのがとっても楽しくて、伊坂さんも(コミカルなシーンが)好きなんじゃないかな」と話す。
特集放送では、各作品の放送前に中村監督と濱田さんのインタビュー映像が流され、各作品への思いなどが語られる。中村監督について、濱田さんは「僕にとっては一番仲がよくて、一番怖い監督」と表現し、プライベートの話もする仲だという。そんな2人が語る撮影エピソードも見どころの一つだ。
中村監督は特集放送について、「17歳から23歳まで、濱田岳の成長が手に取るように分かる。俳優・濱田岳の成長を見てほしい。楽しんで」とアピール。濱田さんも「こんな機会を作っていただけるなんて、夢にも思ってなかった。これも何かの機会と思って、見ていただけたらうれしいです」と呼びかけた。
「映画で“観る”伊坂幸太郎の世界」は、11~14日午後9時からWOWOWシネマで放送。
<プロフィル>
中村義洋(なかむら・よしひろ) 1970年、茨城県出身。大学在学中の93年に撮った「五月雨厨房」がぴあフィルムフェスティバル準グランプリを受賞。卒業後、崔洋一監督、伊丹十三監督作品などの助監督をへて、99年に自主製作映画「ローカルニュース」で監督デビュー。「アヒルと鴨のコインロッカー」(07年)で注目される。その後のおもな作品に「チーム・バチスタの栄光」(08年)、「ジャージの二人」(08年)、「フィッシュストーリー」(09年)、「ジェネラルルージュの凱旋」(09年)、「ゴールデンスランバー」(10年)、「ちょんまげぷりん」(10年)、「映画 怪物くん」(11年)、「ポテチ」(12年)、「みなさん、さようなら」(13年)がある。
濱田岳(はまだ・がく) 1988年生まれ、東京都出身。10歳のときに連続ドラマ「ひとりぼっちの君に」(98年、TBS系)で俳優デビュー。これまでに数多くのテレビドラマ、映画、CMなどに出演。映画「アヒルと鴨のコインロッカー」(07年)で、高崎映画祭最優秀主演男優賞を受賞。その後は、「フィッシュストーリー」(09年)、「ゴールデンスランバー」(10年)、「ポテチ」(12年)、「みなさん、さようなら」(13年)に出演し、中村監督作品には欠かせない存在に。そのほかの映画出演作には、「鴨川ホルモー」(09年)、「今度は愛妻家」(10年)、「THE LAST MESSAGE 海猿」(10年)、「ロボジー」(12年)、「宇宙兄弟」(12年)など。
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