本の王子様:年間トップは「乙嫁語り」 タイトル間で格差拡大

まんが王の2012年マンガ年間トップに輝いた「乙嫁語り」4巻(エンターブレイン)
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まんが王の2012年マンガ年間トップに輝いた「乙嫁語り」4巻(エンターブレイン)

 マンガ、ライトノベルの専門店「まんが王八王子店」のバイイングマネジャー・日吉雄さんが、売れ筋商品を毎週報告する「本の王子様」。今回は特別編として、コミックスの年間ランキング(11年12月~12年11月)を基に、今年のマンガ事情を振り返ってもらいました。1位に輝いたのは5月に発売された「乙嫁語り」4巻(エンターブレイン)でした。

ウナギノボリ

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 年間ランキングは、森薫さんの「乙嫁語り」4巻が首位を獲得しました。熱心なファンが多いのが最大の特徴で、発売から3日分の売り上げが全体の3分の2を占めています。皆さん新刊の発売を待っていてわざわざ発売日までチェックして買いに来てくれました。一般的にコミックスは、巻数を重ねるごとに「発売日に買わなくてもいいや」と思われることが多いだけに、ファンの熱意がここまで順位を押し上げたといえるでしょう。また、森さんの短編集「森薫拾遺集」も3位にランクイン。なみいるシリーズ作を抑え、短編集がここまで上位に来たのもこうしたファンのおかげですね。

 また、店頭でサイン会を実施したおかげもあって「ウィッチクラフトワークス」4巻が躍進。マンガ大賞を受賞した「銀の匙」2巻も大きく伸びました。今年もマンガ大賞の効果は大きく、エントリーされた作品はヒットしています。

 振り返ってみると、売れる作品とそうでないものとの格差がより一層拡大し、今年のマンガ市場は厳しかったと言わざるをえません。ネットで話題になったりニュースで取り上げられたものが売れる一方で、そうした動きが見えなかったものはほとんど動きませんでした。また、マンガ雑誌の苦戦も大きく影響しています。雑誌を購入すると自分のお目当て以外の作品も目にするので、そこからファンになるケースも多いのですが、雑誌が売れていないことで、いい作品なのにお客さんの目に留まらないという状況が起きています。

 13年も厳しい状況が続きそうな雰囲気ですが、一方で「ガンガンONLINE」で連載中の「私がモテないのはどう考えてもお前らが悪い!」など、ウェブコミックからのヒット作が生まれてきているのは好材料。こうしたことも踏まえながら、さまざまな取り組みが求められていくでしょう。

 ◇まんが王八王子店の年間マンガランキング(11年12月~12年11月)

1位 乙嫁語り(4)

2位 ウィッチクラフトワークス(4)

3位 銀の匙(2)

3位 森薫拾遺集

5位 あまんちゅ!(4)

6位 To LOVEる ダークネス(4)

7位 ジョジョリオン(1)

8位 とある魔術の禁書目録外伝 とある科学の超電磁砲(7)

9位 げんしけん(11)

10位 テルマエ・ロマエ(5)

 ◇プロフィル

 ひよし・ゆう=マンガやライトノベルの豊富な品ぞろえで知られるマンガ専門書店「まんが王八王子店」のバイイングマネジャー。売れ筋を読み取り、お客のニーズを満たし続けるマンガ売りのプロ。

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