注目映画紹介:「ブラック・ブレッド」殺人容疑をかけられた父を持つ少年から見た大人のドス黒さ

「ブラック・ブレッド」の一場面 (C)Massa d’Or Production Cinematografiques i Audiovisuals,S.A
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「ブラック・ブレッド」の一場面 (C)Massa d’Or Production Cinematografiques i Audiovisuals,S.A

 今年の米アカデミー賞外国語映画賞部門のスペインの代表作で、スペイン・アカデミー賞最多9部門受賞の話題作「ブラック・ブレッド」(アグスティー・ビジャロンガ監督)が23日、公開された。スペイン内戦後の1940年代が舞台。少年を主人公に人間の闇を映し出すダークミステリー作だ。

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 1940年代のスペイン・カタルーニャ。11歳の少年アンドレウ(フランセスク・クルメさん)は、友人とその父親ディオニスの遺体を発見する。友人は最後に「ピトルリウア」という言葉を残した。それは、森の洞穴に潜むといわれる羽を持った怪物の名前だった。警察は殺人事件と断定。ディオニスの左翼運動の仲間でアンドレウの父、ファリオル(ルジェ・カザマジョさん)に容疑がかかる。父が姿を消し、アンドレウは祖母の元に預けられる。そして大人たちが隠してきた現実が次々に明らかになり……という展開。

 始終モヤモヤする。無垢(むく)な少年の側から見せられるドラマは、暗い森の中でさまようかのように、何が真実なのかがなかなか見えないからだ。父親の持つ秘密とはなんなのか。この村で何があったのか。この狭い村社会の人間関係が恐ろしい。アンドレウにたっぷりのおやつを用意する太ったおばちゃんは何をもくろんでいるのか。アンドレウの父に容疑者として目をつけた町長は何をたくらんでいるのか……。富める者と貧しき者の対比の中に、大人のドス黒い現実が浮き彫りになる。主人公のアンドレウを演じるクルメさんは本国でゴヤ賞の新人男優賞を受賞。少年が無垢を捨て去る、その変化の様子を見事に演じている。23日から銀座テアトルシネマ(東京都中央区)、ヒューマントラストシネマ渋谷(東京都渋谷区)ほか全国で順次公開。(キョーコ/毎日新聞デジタル)

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