マンガ質問状：「ばらかもん」　原稿は締め切り2～3週前に完成　長崎・五島列島で雷被害も

　話題のマンガの魅力を担当編集が語る「マンガ質問状」。今回は、作者が住む長崎県・五島列島を舞台に若き書道家と島民たちの交流を描いたヨシノサツキさんのマンガ「ばらかもん」（スクウェア・エニックス）です。ガンガンONLINE編集部の石川裕香さんに作品の魅力を聞きました。

ウナギノボリ

10年前の朝ドラ「花子とアン」　当時の吉高由里子インタビュー

　−−この作品の魅力は？

　「ばらかもん」は、若き書道家・半田清舟が、書道界の重鎮を殴った罰として島暮らしを命じられたところから始まります。「実につまらない字だ」「お前は人間として足りない部分がある」と言われ、大人たちに与えられた壁を乗り越えるために島で生活を始めた半田先生。そこで出会う人々や田舎の風習に振り回されながら、先生は書道家として、人として、少しずつ成長していく、というお話です。

　慣れない田舎暮らしに奮闘するイケメン書道家・半田先生の無様な姿に笑ったり、子供たちの田舎あるあるにほのぼのしたり、島民たちの器の大きさに癒やされたりと、リラックスして楽しめる、いわゆる田舎の日常系マンガとしても楽しめますし、時には悩み、もがき、真剣に書に向かう半田先生の姿に胸を打たれたり。

　登場するすべての人がばかばかしくもいとおしく感じる、笑えるのになぜか心温まる作品だと思います。

　−−作品が生まれたきっかけは？

　「ばらかもん」を始める前の連載作品の打ち合わせ中に、ヨシノ先生が話してくれる「今日のできごと」があまりに面白くて、これは自分だけが聞いて笑っているのはもったいないから、次の作品は絶対に島の話にしてもらおう、と思ったのがきっかけです。

　そのことをヨシノ先生に相談すると「わかりました！！」とその日から取材のようなものを始めてくださったのですが、まじめすぎて最初はタバコ畑のことを必死に調べてくれていました（笑い）。そういう勉強になる感じのもありだとは思ったのですが、それよりもありのままの島の生活を、ありのままの人間関係を、ヨシノ先生の「今日のできごと」そのままの、楽しい作品を……！　ということで「ばらかもん」が誕生しました。

　−−編集者として作品を担当して、今だから笑えるけれど当時は大変だった……、もしくはクスッとしたナイショのエピソードを教えてください。

　大変だったこと……は、ほとんどないですね。年に何度か五島に取材に行くのですが、取材といっても釣りをしたり、虫捕りをしたり、泥遊びをしたりと……。なんというか……、一緒に遊んでばかりですし……（苦笑）。リラックスしすぎてヨシノ先生のお宅でうっかりお昼寝してしまって、帰りの飛行機に間に合わなそうになった時、はじめて焦ったぐらいです（笑い）。

　あとは、作品中にも描かれているのですが、五島は西の方なのでけっこう台風がくるんですよね。一度、先生も雷でパソコンをやられちゃったみたいです。原稿はアナログなので進行には問題なかったのですが、島の電気屋さんにパソコンがあまり売ってなくて、取り寄せるまでちょっとだけやりとりが大変でしたね。それ以来、雷よけのコンセントを使用しているそうです（笑い）。

　よく、先生が地方にお住まいだから「原稿の受け渡しが大変でしょう？」って聞かれたりするのですが、ヨシノ先生はアシスタントさんがいないにもかかわらず、締め切りの2～3週間前には必ず原稿が上がっているんです。「ばらかもん」をはじめたきっかけの一つに、前の作品の連載中、あまりにも原稿の上がりが早いので、もう1本ぐらい増やせるのでは……ということもあったのですが、その時「原稿終わってやることがない時って何してるんですか？」と聞いたら先生が「岩のごとくただひたすら座ってます」と答えた衝撃は、今でも忘れられません（笑い）。

　−−今後の展開、読者へ一言お願いします。

　7月21日に待望の6巻が発売になります！　ツイッターアイコンがもらえるキャンペーンなどを開催予定なので、そちらも楽しんでいただければうれしいです。

　そして、７巻も13年3月22日に発売が決定しているのですが、こちらはなんと、初めての初回限定特装版が同日発売されます。初回限定特装版には、残念なイケメン・半田先生の魅力全開の「半田先生残念フィギュア」が付いてきます！　 すごくかわいいので、詳細は7月19日以降にガンガンＯＮＬＩＮＥでチェックしてみてください。予約を受けた数だけ作る受注生産品なので、絶対欲しい方は予約していただくのが確実だと思いますので、ぜひご予約を！

　本編の方もこれからも楽しくまったりとお届けいたします。少しでも楽しんでいただければ幸いです。どうぞよろしくお願いします！

　スクウェア・エニックス　ガンガンONLINE編集部　石川裕香