注目映画紹介:「ももへの手紙」 父を亡くした娘と母の田舎暮らし どの世代も楽しめるアニメ

劇場版アニメ「ももへの手紙」の一場面(C)2012「ももへの手紙」製作委員会
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劇場版アニメ「ももへの手紙」の一場面(C)2012「ももへの手紙」製作委員会

 劇場版アニメ「人狼 JIN-ROH」(99年)の沖浦啓之監督の最新作「ももへの手紙」が全国で公開中だ。これまでのイメージをガラリと変えて、少女と妖怪のファンタジー作に仕上がっている。父親を亡くした少女と母親、そして田舎の人々との触れ合いを描く優しい作品だ。

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 小学6年生のもも(声:美山加恋さん)は、父親を事故で亡くした際、けんかしてそれきりになってしまったことを後悔していた。ももの手元には、父親が「ももへ」と書いただけの手紙が残った。夏のある日、ももと母親のいく子(声:優香さん)は、いく子がかつて住んでいた瀬戸内海の島へ引っ越してきた。屋根裏の古道具の中から江戸時代の本を見つけたもも。そこに奇妙な妖怪3人組が現れて……という展開。

 ただホンワカとした家族物語ではなかった。リアル感あふれる緻密な作画で、舞台の瀬戸内が、まるで実際に行ったかのように眼前に広がる。その美しい風景は、ももが楽しそうであればキラキラと輝いて見え、ももが寂しそうであれば憂いを帯び、まるで生きているかのように見える。登場人物の表情の繊細さもさることながら、仕草、動作もすべてが細かく描かれている。個性豊かな3人の妖怪がももの友だちになってくれるのかと思いきや、どちらかというと邪魔ばかりしているところもクスリと笑える。一家のあるじを亡くした母の姿も丁寧に描き出し、どの世代が見ても楽しめる間口の広さとアニメーション技術の高さ、ファンタジーとリアルが絶妙に融合。大切な人を失くした人にぜひ見てほしい。主題歌は原由子さんの「ウルワシマホロバ~美しき場所へ~」。21日から丸の内ルーブル(東京都千代田区)ほか全国で公開。(キョーコ/毎日新聞デジタル)

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