ブック質問状:「ここはボツコニアン」 オウガ17周、宮部みゆきのゲーム愛がここに

宮部みゆきさん作、高山としのりさんイラストの「ここはボツコニアン」(集英社)の表紙
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宮部みゆきさん作、高山としのりさんイラストの「ここはボツコニアン」(集英社)の表紙

 話題の小説の魅力を担当編集者が語る「ブック質問状」。今回は、ゲームをテーマにした宮部みゆきさんの異色作「ここはボツコニアン」です。集英社文芸編集部の徳永真さんに作品の魅力を聞きました。

ウナギノボリ

 −−この作品の魅力は?

 人気ナンバーワン女性作家であると同時に、“ゲーム女”としても名高い宮部みゆきさんが、持てるゲーム愛のすべてを注ぎ込んだRPGファンタジー。ゲームの「ボツネタ」が集まってできた、できそこないの国「ボツコニアン」をより良い世界に作り替えるため主人公の少年少女が大冒険をするのですが、随所に作者がゲームや海外ドラマの薀蓄(うんちく)もまじえた“メタなツッコミ”を入れてきて、話は先の読めない方向に……!? ゲーマー宮部さんのゲーム愛あふれるエッセーとして読んでも楽しめますよ!

 −−作品が生まれたきっかけは?

 かつて宮部さんがネットで「ゲーム女の生きる道」というコラム連載をしていて、これだけゲームのことだけで原稿が書けるならいっそ小説にしてしまえば!?という話になりまして。当時「小説すばる」という雑誌の編集長をしていたのですが、すぐ連載にGO!を出しました。結果、現在もシリーズは本誌連載中です。ただご本人もこの作品をシリーズ化していいのか、少なからず弱気な部分があったようで、そのへんは単行本のトリセツ(取扱説明書)や本文を読んでもらえるとよく分かります。

 −−「ピノ」と「ピピ」の二人の名前は、古いゲームファンならものすごくなじみのある名前なのですが、モデルは?

 今さら告白すると、担当者である自分のゲーム歴はスーファミぐらいでストップしていて、その後のゲーム事情のことはほとんど分からないのです。そこで宮部さんに電話をして確認してみましたところ、まったくモデルはないそうです。ナムコスターズのピノ、ピピが元ではないかといううわさがあるらしいですが、まったくの偶然だそうです。あしからず。

 −−作者・宮部さんのゲーム好きは有名ですが、どのくらいゲームをされているのでしょうか?

 これまた自分はあまりやらないので、直接聞いてみました。「やったゲームタイトルはきりがないんだけど、一番やったのは『タクティクス・オウガ』かなあ。死者の宮殿も含めて、ぜんぶで17周はやったと思う」だそうです。これまた、ますます自分にはよく分かりませんが。

 −−編集者として、この作品にかかわって興奮すること、逆に大変なことについてそれぞれ教えてください。

 お気楽脱力系ファンタジーと読まれる方もいて、それはそれでいいんですが、実は壮大なテーマを隠し持った作品なのです。少しずつ物語が本題に近づいていくのを見ながら、期待し興奮しています。シリーズ第2巻は11月ごろ発売予定なのですが、そちらを読んでいただければより分かると思います。大変なことは、ゲームや海外ドラマに詳しくないので調べごとが多いことでしょうか? 勉強にはなります。

 −−今後の展開、読者へ一言お願いします。

 シリーズが全何巻になるかは未定なのですが、前項にも書いたとおり、物語はどんどん本格アドベンチャーファンタジーの度合いを強めていきます。もちろん今後も「ボツコニアン」の世界ならではの「二軍三国志」が登場したり、“メタメタな世界観”は一貫しているのですが(笑い)。ゲームが苦手な担当者でさえ、読めば読むほどハマっていくのですから、読者の方も一巻一巻、期待してお待ちいただけますと幸いです。

 集英社 文芸編集部 徳永真

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