マリリン 7日間の恋:主演のミシェル・ウィリアムズさんに聞く「自分の魂をささげて演じる」

映画「マリリン 7日間の恋」のPRのため来日したミシェル・ウィリアムズさん
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映画「マリリン 7日間の恋」のPRのため来日したミシェル・ウィリアムズさん

 1962年に享年36でその生涯を終え、50年たった今も“世紀のスター”とたたえられるマリリン・モンロー。その秘められたロマンスを描く「マリリン 7日間の恋」(サイモン・カーティス監督)が公開中だ。モンローの主演映画「王子と踊子」(57年)の撮影中の出来事を描いた今作は、当時、第3助監督だった故コリン・クラークさんの回顧録を基にしている。PRのために来日したモンロー役のミシェル・ウィリアムズさんに話を聞いた。(りんたいこ/毎日新聞デジタル)

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 一体誰が、このベリーショートヘアでスマートな体つきの女性が、あの“世界的セックスシンボル”とうたわれるマリリン・モンローを演じることになると予測しただろう。それは、演じたウィリアムズさん本人も同様だった。モンロー役をオファーされたとき、「なぜ私が?」と思ったという。だが、まさしくその思いこそが、彼女をモンロー役に向かわせた原動力だった。彼女を「Wendy and Lucy」と「Meek’s Cutoff」で起用した、友人でもあるケリー・ライカート監督からの「最高じゃない。あなたがモンローを演じるなんて誰も想像できないもの」という言葉も背中を押した。「想像できないからこそ面白くなるのよね。それが、演じる上で励みになりました」とウィリアムズさんは振り返る。

 重責を見事に果たしたことは、今年のアカデミー賞主演女優賞にノミネートされたことで実証済みだ。「人生最大の挑戦でした。エベレスト……じゃなくて富士山(笑い)に完全装備で挑み、頂上までたどり着けました」とちゃめっ気たっぷりに語り、「いいチームにも恵まれました。初めて月面を歩いた人だって、たくさんの人に支えられて成功できたわけでしょ? 映画も一緒です」と今作に携わったキャストとスタッフへの感謝の言葉を口にした。

 役作りのためにモンローの作品を何度も見返した。体重も増やしたが、やみくもに食べてもモンローのようなグラマラスな体形になれるわけではない。「とりあえず、体重を増やすために好きなものを食べ始めたけれど、メークの人に、お尻はともかく、ほお(のふくらみ)はどうしようもないからこれ以上太らないで、といわれたわ」と屈託なく語る。体重計に乗る習慣をもともと持ち合わせていないウィリアムズさんは、自分が何キロ太り、その後、どう体重を落としたかも分からないという。「撮影中はいていたジーンズをあとではいたらブカブカで脱げちゃったの」と、世の女性たちにはうらやましい限りのコメントも飛び出した。ちなみに、ウィリアムズさんの好物は、コーヒー味のアイスクリーム。あとは意外にも「雪見だいふく」。「いちご味にストロベリーショコラ……。アメリカにも売ってるわ」。日本にはあずき味のアイスがあると聞くや、「ホント? 食べたい! あと、おもち入りのグリーンティー(抹茶)味も!」と目を輝かせていた。

 05年の「ブロークバック・マウンテン」、10年の「ブルーバレンタイン」、そして今作とアカデミー賞の候補に3度挙がり、現在31歳にして、すでに“大物女優”のオーラをまとう。だが素顔は、ガールズトークが好きそうな、よく笑う、とてもチャーミングな女性だ。一方で、6歳の娘の母としての顔が時折のぞく。日ごろの食生活について聞いたときも、「10代のころに比べたら今の食生活は断然ヘルシー。娘のことを考えて気を使っているの」とよきママぶりを披露……と思いきや、「でも、もちろんおやつも食べるわよ。娘のために甘い焼き菓子を作るのが好きなの。お店で買ったチョコレートを食べさせるんだったら、私が焼いたケーキを丸ごと食べてもらったほうがいいわ」と娘への愛情を見せた。

 「生命力にあふれ、瞬間的に弾けるもの、それは、俳優なら誰もが望む資質ですが、それをマリリンは持っていました。だからこそ、亡くなった今も彼女は色あせないのです」とモンローの魅力を改めて表現する。そんなモンローを演じて体得したこととして、「女性であること」と「リラックスすること」を挙げる。それまでのウィリアムズさんは、「どちらかというと、面倒を見てもらうのが苦手な自立型の人間」だったという。でも今は、「リラックスすることと弱さは違う。人に頼る生き方ができるようになった」と明かす。それともう一つ、以前の前かがみの座り方から、「淑女らしく背筋を伸ばして座れるようになった」ともいう。

 「女優業の楽しさは、普通の人生では経験できないことが経験できるところ。仕事のためならなんだってやれるわ。髪の毛だって全部そるし、太ったっていい。だって、自分の魂すべてをささげて演じているわけだから、肉体の変化なんて恐れることじゃないわ」といい切ったウィリアムズさんは、まさしくモンローと同じ「生命力にあふれ、瞬間的に弾けるもの」を持った女優だった。

 <プロフィル>

 1980年アメリカ生まれ。映画デビューは94年の「名犬ラッシー」。米テレビシリーズ「ドーソンズ・クリーク」(98~03年)でブレーク。05年に「ブロークバック・マウンテン」で米アカデミー賞助演女優賞候補、10年に「ブルーバレンタイン」でアカデミー賞主演女優賞候補となる。「ブロークバック・マウンテン」で共演した故ヒース・レジャーさんとの間に、05年に生まれた娘がいる。主な出演映画に「私が二度愛したS」「脳内ニューヨーク」(ともに08年)、「シャッターアイランド」(09年)など。13年公開予定のサム・ライミ監督作「Oz:The Great and Powerful」では魔女グリンダを演じる。

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