今年のアカデミー賞とゴールデン・グローブ賞で外国語映画賞をダブル受賞した話題作「別離」(アスガー・ファルハディ監督)が7日公開された。イラン映画としては初めてのオスカー受賞という輝かしい作品。夫婦のすれ違いを軸に、なぜ争いがなくならないのかを浮き彫りにする。深いテーマだが、見事なエンターテインメント作に仕上がっている。
ウナギノボリ
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テヘランで暮らすシミン(レイラ・ハタミさん)とナデル(ペイマン・モアディさん)は結婚14年の夫婦。妻シミンは11歳になる娘の将来を考えて、国外移住を希望していたが、夫ナデルは移住に反対だ。同居する父親がアルツハイマーで介護がいるからだ。裁判所でも話し合いは平行線。シミンは実家に帰り、ナデルは父の介護のために子連れの女性ラジエー(サレー・バヤトさん)を雇う。ある日、父親がベッドから落ちる事件が起きる……という展開。
会話のキャッチボールを、流れるようなカメラワークでつづり、「どうなっていくの?」とみるみるうちに引き込まれていく。経済的に豊かな夫婦(雇う側)と、貧しい夫婦(雇われる側)の価値観のズレ。そして、それぞれの夫婦間もまたズレているという二重構造だ。それぞれが主張を通すことで、少しずつ歯車が狂っていき、人と人の糸がからまったり、結ばれなくなっていくさまを見せつける。すべての登場人物の視点から語られているのに雑多になっていない。ここには、うさんくさい「絆」は存在しない。人と人はそう簡単に分かり合えない、というリアルさがあった。Bunkamuraル・シネマ(東京都渋谷区)ほか全国で順次公開中。(キョーコ/毎日新聞デジタル)
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