ラノベ質問状:「オーディナリー・ワールド」 謎の作者とカナダ人絵師が描く話題作

槙岡きあんさん作、KLさんイラストの「オーディナリー・ワールド」3巻(集英社)
1 / 1
槙岡きあんさん作、KLさんイラストの「オーディナリー・ワールド」3巻(集英社)

 話題のライトノベルの魅力を担当編集者が語る「ラノベ質問状」。今回は、地方から東京に出てきた主人公たちのコミカルな日常を描いたラブコメディー「オーディナリー・ワールド」(槙岡きあん著、KL画)です。集英社スーパーダッシュ文庫編集部の高橋博さんに作品の魅力を聞きました。

ウナギノボリ

 −−この作品の魅力は?

 進学を機に東京デビューを果たした地方出身の高校生たちが、都会の人間として振る舞おうと背伸びをしながら一生懸命に日々を過ごす青春ドタバタラブコメ……といったところでしょうか?

 ラブコメに関してご説明すると、金髪碧眼(へきがん)ハーフのモデル級美少女のいばらと、黒髪ストレート色白でちょっと不気味だけど、実はすごい美人のうらみという2人の女子から言い寄られる、見た目はヤンキーでも心はオトメンな男子の大空夢(たくむ)が優柔不断ぶりを発揮する三角関係モノといった感じです。

 主人公の大空夢が栃木出身、ヒロインのいばらが群馬出身という設定を生かすために、家電戦争みたいな北関東を舞台にしたライバル同士の戦いにしよう、と試みたのが3巻です。1巻、2巻は東京が舞台で、湾岸エリアのタワーマンションで繰り広げられるアーバン(?)なラブコメです。

 −−作品が生まれたきっかけは?

 「英語で意味深なタイトルにすると洋楽みたいで“中二的”なんじゃないか?」と、槙岡きあん先生から提案があり、「オーディナリー・ワールド」というのが最初に決まりました。“普通の世界”、“日常の世界”、といった意味に和訳できると思いますが、主人公たちが新しい舞台で、どんなふうに“オーディナリー・ワールド”を手にするか、というテーマから物語が生まれたと記憶しています。

 あと、タワマンで主人公たちが同居する設定は名作「翔(と)んだカップル」へのオマージュです。

 −−作家さんとイラストレーターさんはどんな方でしょうか?

 槙岡きあん先生はプロフィルをまったく公開されておりません。あとがきにあるように旅行やお散歩がお好きな方です。取材がてら街を歩き、美味しいものを食べたりと、よくご一緒させていただいております。

 イラストのKLさんの絵には、とある小冊子に描かれていた作品を一目見て魅了されました。すぐに連絡を差し上げたところ、正真正銘のカナダ人の学生さんだとわかりびっくりしました。イラストを描き始めたきっかけは、子供のころに「セーラームーン」のアニメに出会って以来、日本のアニメやマンガが大好きになったそうです。片言の日本語はお話しできるし、ネットがあれば時差も距離も関係ありませんので、お仕事をお願いしました。グローバルな時代になったなあ~と、感慨深くもあります。

 −−編集者として、この作品にかかわって興奮すること、逆に大変なことについてそれぞれ教えてください。

 興奮することとしては、展開がノッている時のキャラの行動、セリフに大笑いさせられること。校了中に涙を流しながら爆笑しています。キャラクターを描くのが本当にお上手で、モノローグやセリフが自然体のままギャグになっているのは槙岡きあん先生の武器であり、センスだと確信しています。

 KLさんの描かれるキャラクターは、主人公たちのピュアさ、透明感が素晴らしいと思います。KLさんの外国からの視点が、東京の地方出身者というキャラクターたちの心情にマッチしているのではないかと、ひそかに分析したことがあります。

 大変なことは、そんなに感じたことがないかも知れません……。確かにないです。

 −−今後の展開、読者へ一言お願いします。

 うらみが最終的にどうなるのか? あるいは、どこから来て、どこに行くのか?というメインテーマが解き明かされていないのが気になるところです。その後の展開は作者のみぞ知るところではあります……。近く新作もスタートしますので、「オーディナリー・ワールド」はじっくりと執筆されるつもりだとうかがっています。

 集英社 スーパーダッシュ文庫編集部 高橋博

ブック 最新記事